奈穂子にコーヒーを奢る条件で、髪のセットを毎回お願いしているつくし。
大抵は後ろでお団子にするだけでも、それすらつくしは億劫になる日々。
「つくしも大変だよね。今日はあんかけパスタどう?」
「いいねえ。近くに良い店有るからさ」
奈穂子もつくし程ではないが、残業続きの日々でも家事を完璧にこなしている。
既婚で小学校入学を控えた娘と、2歳の息子が居るのにである。
つくし達のマンション近くで、今時珍しくも一戸建てを購入し3世帯暮らしである。
「お弁当はダンナさん担当だっけ?」
「うん。ダンナ旅館の板前だったし。シフトが遅番だから。でも助かってるわ」
つくしは弁当を作る事も出来ない多忙さで、最近
はランチも外食の日々が続いている。

奈穂子の夫は、『メープル』のテナントに入っている日本料理店で副板長を勤めている。
社長でもある『道明寺楓』の目に叶い、店舗閉鎖に伴い今の職場へヘッドハンティング。
料理旅館『瑞兆』は、知る人ぞに知られた超有名店。
本店は京都にあり、著名人や文豪達に愛されて来た。
最初は偉人の妻子が営み出した、此方の旅館。
女将の秘蔵っ子と言われた奈穂子の夫と、当時の料理長が名古屋の千種で日本料理店を構えた。
名前や彼らの評判を聞きつけ、店は繁盛していた矢先。
本店の方で『食中毒騒動』が起きた。
その煽りは『風評被害』の形で表れ、只でさえ金額の高かった高級料理店。
ファストフードや、安い金額志向になりだした当時。
店舗は閉店となったが、その腕を高く評価していたのは『鉄の女』と『敏腕秘書』。
『メープル』の日本料理店は異世界への大抜擢。
実際に副板長の料理目当てに通う、宿泊者やファンもかなり居る。
最初こそ歪みはあったが、楓と西田のお墨付きともなれば無下には出来ない。
事実彼の腕は、更なる進歩を遂げている。
その形はランチ時の行列と言う形で表れている。
「良いなあ。あたしも料理の上手い彼氏欲しいなあ」
「料理男子って、最近多いでしょ。何なら紹介しよっか・・・って、私達を無職にするつもり?」
つくしの肩を叩こうと、奈穂子は早歩きで追いかけて来た。
「きゃっ・・暴力はんたあーい」

「牧野・・・谷口。ヤバいぞ、もうすぐ、副社長の車到着するみたいだぞ」
バーコードに近い頭の、中年太り気味なスーツの男性が後ろから声を掛けてきた。
部長の棚橋である。
「どうしよ、急ご・・・奈穂子」
「大変、副社長来るならロビーは人だかりね」
「既に人だかりの見物人になるから、安心しとけ」
案の定ロビーは、女子占有率の高い黒山の人だかりである。
「ハリウッドの俳優でも来るみたいね」
「皇族を出迎える、国民みたい」
つくしは後ろの方で、唖然としている。
奈穂子は欠伸をしながら、口元を抑えつつも。
「やっぱ今日のランチは、あんかけパスタにしようか?」
「そだね」
二人の関心は、未だ知らぬ副社長一行よりも昼のランチメニューだった。




ホンマウチの話は、司が中々出て来ないんがネックやんな←。
次回は出て来ます・・大名行列ですからwww。


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従業員専用入口で、近くの化粧室に走り込む。
警備員の顔はひきつり気味になっているが、それは毎度の事である。
メイク前の女性は、見てはならないお化けを見る感覚だからだ。
つくし達の『企業営業部プランニング課』は、主に宿泊部署でのプランを出し合い営業部とのパイプを担ったりする部署だ。
オプションを企画したり、部署によってはツアー客向けのプランを企画する事等多岐に渡る。
旅行代理店との橋渡し的役割もあり、かなりハードな部署でもある。

化粧室へ走り、急いで支度をする二人。
奈穂子はメイクボックスを開くと、つくしを屈ませる。
首周りにタオルを巻き、ほつれた髪をブラシで解かしてお団子に纏め上げる。
「流石、奈穂子。手慣れてるよねえ」
「分かったから、動かないでよ」
スプレーを振り掛けて、バレッタで止めると完成する。
直ぐに頬っぺたへ、ファンデーションとチークを滑らせる。
眉を調えて、睫毛をカールして眉墨を軽く書いて完成させ。
最後はグロスを塗り終えて、タオルを叩くとメイクは終了した。
簡単なナチュラルメイクだが、公式の場所に出るには最低限で整った。
「ありがとう、助かりましたあ」
「じゃあ、キリマンジャロのホットを後でお願いね」
奈穂子にはコーヒーを奢る条件で、髪のセットをほぼ毎回お願いしてるつくし。
大抵は後ろでお団子にするだけでも、それすらも億劫になっている日々。
急いで化粧室を脱け出すと、早歩きで二人は正面玄関を目指す。
「つくしも大変だよね。毎日日付変更線越えでしょう」
「仕方ないよねえ。今はメープルもかなり、苦戦してるもの。プラン採用されたら、少しは楽になるかなあ」
「ホテルでメープルに泊まるって言ったら、ステイタスだったのよねえ」
「それは何時の話よ」
「まあねえ。それにしても、社長が来社とか聞いてないよ」
「楓社長じゃなくて、副社長の方みたいだよ・・」
つくしの目の前は、暗黒に包まれそうになっている。

思い出すのは、遥か昔の高校時代。
ほんの一時英徳学園なる、ブルジョア御用達の高校へ通っていたつくし。
些細なトラブルへ巻き込まれた上に、数ヶ月の『学費滞納』が響いて中退へ追い込まれそうになった事があった。
中退を『転校』と言う形で、穏便に済ませられたのはトラブルのきっかけを作った御曹司だった。
つくしは都立の進学校を経て、推薦で女子短大の最高学府に入学した。
その後は海外を渡り歩き、翌年には『ホテル・メープル東京・台場本店』に入社から5年。
あれから10年以上の月日が経過している。
「つくし。何があったかは聞かない。でも、昔は思い出のままで良いのよ。今は違うんだから」
奈穂子の心強い言葉に、つくしは今の生活に奮闘する事を心中で誓っていたのだった。






前の話と次の下書きを、削除忘れてました←。
春の暖かさでボケてまして、申し訳ございません。


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余りに短過ぎるお話で、申し訳ございません。
もう1話をアップ致しました。
宜しくお願い致します。


「大丈夫?つくし」
隣のバス停で若干の余裕が出来ると、つくしは立ち直す。
隣には綺麗にブローした髪を、バレッタで纏めたミニスカートの女性。
つくしより若干、高い目線で化粧の行き届いたスタイリッシュな服装。
「あ~あ、今日もギリギリだった?もしかしなくても・・・」
同じ部署の谷口奈穂子である。
「あ、おはよー。昨日もさ色々あってね」
「大変だよね、弟さんも夜遅いし。つくしは生活疲れしてるしね」
「慣れたばっか・・・でもないや。本社の時間慣れが未ださ」
奈穂子は31歳で元スタイリストと言う、異業種からの転職組だ。
彼女はフレックスで、何時もは若干遅い出勤時間である。
しかし今日に限っては、フレックの奈穂子も定時出勤となっていた。
「上司命令とあってはねえ。つくしもそんな顔じゃ、お岩さん顔負けだからね」
「時間あるの?」
指を左右に揺らしながら、ニッコリ笑う奈穂子。
「モデルやタレント相手の時は不規則だったから。全然よ」
「今日は何のコーヒーが良いの?」
「キリマンジャロで良いわよ。メープルは、珈琲だけは良いからさ」
「ありがとう、助かるよ」
つくしの仮止めした・・とされる、バレッタは途中の毛先に引っ掛かり玉が出来ている。
「どうでも良いけど、引っ掛かってるし。痛いわよ」
奈穂子はつくしの毛先から、器用にバレッタを取り外す。
毛先を引っ張られたつくしは、小さく悲鳴を上げる。
「キャッ、痛いって」
「ゴメンゴメン。でもさ、つくし・・ちゃんとしないとかなり傷んでるよ」
神妙そうな顔で、奈穂子は言った。
「うん」
つくしは手すりに反射して、映る自分を見れば確かに幻滅しかねなかった。
『次は〜』
アナウンスの音が、つくし達の降車するバス停に到着する。
雪崩れを打って、乗客が下車をし始めた。
つくしはTOICAを翳して下車を試みた、が残高不足で客は足止めを食らう。
急ぎchargeの紙幣を挿入して、下車するも。
後から続く客に、一睨みされながらつくし達は下車した。
「さ、急がなきゃ。大名行列迄、後少しだよ」
奈穂子に促され、つくしも足早に職場へ向かって行く。
今日の戦場も、ハードになりそうであった。

あ~、頭がごちゃごちゃでアップもパニクっております。
明日も急遽、出勤になりそうなんで。
急いで予約投稿の支度に、バタバタしまくりです。
読者様には毎度お騒がせしております。
申し訳ございません。





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「オイ、姉ちゃん。何時迄寝てんだって」
進がバイトから帰宅したのは、0時近く。
マンション近くに有るファミレスの厨房で、夕方の5時から7時間働いている。
学費が予想以上に掛かる為、生活費は姉に頼る割合が高い。
マンションの立地条件も、名古屋駅に近い為家賃もかなり高い。
去年から値上げもあったりで、進は週3でバイト浸けになっていた。
ソファーで化粧が少し残り気味なつくしに、進は姉の仕事がかなり激務で有る事を薄々は感じていた。
「ランチ・・食べる・んだ・・」
寝言に呟くのは、毎回食べ物か仕事の話。
昨日は社長の無茶苦茶だのと、ボソボソ口を動かしていたらしい。
「仕方ねーな。頼むっから、過労でダウンは止めてくれな」
進は体格も大きい方ではないが、姉は元が華奢で最近は痩せ気味でもある。
食欲旺盛だが、胃下垂なのか殆ど見た目は変わらない。

姉をお姫様抱っこすると、寝室のベッドに少し乱暴に下ろす。
弾みでつくしの身体が、俯せになる。
つくしの意識は、戻らなかった。

ピピピピ・・・カン高い電子音が、つくしの脳内に響いてしかめた面で音を止めようとする。
「きゃああ〜っ、遅刻しちゃう〜」
つくしは叫ぶなり、ベッドから落下しつつも急いでベッド下の引き出しから仕事着を取り出す。
黒のパンツスーツ、アイロンは掛けて置いた。
つくしは急ぎ服を着替えて、ドライヤーの電源を入れると簡単に解かす。
トートバッグの中身を確認し、冷蔵庫のミネラルウォーターの紙パックを取り出す。
一口含み、冷蔵庫に戻すとヒールを履いた。
「進、戸締まりだけはお願いね」
「姉ちゃんも穴のとじまりはしとけよ。ご無沙汰なんだろ?」
進の元に、やや高めのヒールが飛んで来る。
「あんたなんか、彼女と別れちゃえ」
バタバタする音、派手な音で閉まるドア。
進は姉の行く末を、違う意味で心配していた。

バス亭はタイミング良く間に合い、つくしは戦場状態のバスに乗り込み、トートバッグで身体を抑える。
押しくらまんじゅう状態のまま、つくしの小さい身体はガラスと人に挟まれる。
『きゃあ~。痛ぁ~い』
悲鳴は閉まる音に消され、次の停車場所に向けて
バスは走り出した。

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「茜さあ・・・もう聞いてったら、酷くなぁ~い。辞令が下りたの赴任前日なんだからさっ」
くだを巻きながら、つくしはほろ酔いのままスマホを首に挟んで通話している。
本社で同僚だった「妻科茜」だ。
茜はつくしと同じ『英徳大学女子部』時代から唯一の戦友である。
部署こそ『総務部』『営業部』で異なっていたが、ランチタイムでは貴重な話相手だった。
メープル東京台場本社でも、つくしの異動に大半は『寝耳に水』で。
当時は誘導尋問をランチやらで、しつこく聞かれたものだ。
茜も総務部で有るから、情報収集を試みたものの上層部の壁には勝てなかった。
つくしは納得が行かないまま、渋々赴任したのだが。
『分かったからさぁ・・・つくし。明日も早いんじゃないの?』
茜は宥めながらも、正直酔っ払いの相手をするのはウンザリしていた。
同じ話を1時間も聞かされて、遂には話し中の表示にしたまま切った。
砂嵐の音にアルコールも手伝って、つくしはプチッとキレた。
「茜〜、この薄情者〜ッ」
スマホが勢いあまり、肩からズリ落ちる。
つくしは手に持っていた缶のアルコールを、喉に注ぎ空にした。
手でグシャッと潰し、分別のゴミ箱に投げ込む。
あの後つくしは、見事に遅刻をしてしまった。
学生生活では、皆勤賞も受賞した『牧野つくし』。
本社でも一度たりとも、つくしは遅刻した事等なかった・・・つくしがだ。
走ってた途中でヒールの靴が、脱げて近くを流れる運河に落下した。
それを取ろうと橋から棒を足らし、靴を拾い上げた迄は良かったのだ。
偶々通り過ぎた、ダックスフンドな高級車が水溜まりを通過してつくしの服に掛かってしまった。
「ふざけんじゃないよ〜。あたしの一張羅汚しといて黙って行くんじゃねーっつーの」
かなりデカイ声で車に文句を言った。
ダックスフンドな車は急停車する。
其処のドアが開き、舌打ちしながらつくしを睨み付けるその男。
「人の服汚しといて、ガンつけるとかどんな根性してんのよ」
運転手が下りて来て、ペコペコ頭を下げたのだが。
「トロトロしてる、てめえが悪りぃんだろ」
「はぁ?それが人に謝る態度なの?」
主らしき男の態度が、とにかく気に入らない。
『一触即発』の危機となるつくし。
同乗者していた秘書らしき男性が、危険を察知しクリーニング代を差し出して来た。
「此れは大変申し訳ございません。牧野様、大丈夫でしたか?」
「此れのどこを見れば大丈夫になりますか?」
水溜まりの泥が跳ねて、一部は泥まみれだ。
「失礼致しました。牧野様、取り急ぎ此方を」
その男性は、スーツのポケットから紙幣を数枚差し出して来たのだが。
『あたしは何でもカネで解決しようって、その魂胆が気に入らないんだってば』
その遣り方には一瞬キレそうになったが、時間も押していたので。
「今日のところは、一先ず矛を納めて下さいませんか。主人に変わりまして、お詫び致します」
眼鏡を掛け直しながら、秘書らしき男性が会釈をしたのでつくしも怒りを抑えつつ。
それを受け取り会社に向かうのだった。
従業員通用門を通り過ぎて、ホテルのロビーから入りそうになってしまうも。
顔見知りのベルボーイの男性に、声を掛けられて慌てて従業員通用門へ向かったものの。
始業時間は大幅にオーバーしていた。
上司からは当然だが、お小言タイムで30分潰された。
「靴拾う余裕有るなら、遅刻しない時間に出れば済む話でしょう」
余りの正論にぐうの音も出ない。
ホテルのロビーから出社しそうになった事と併せ、お小言タイムが更に延長される。
つくしの機嫌は最悪以外、何もなかった。
「あの男今度見たら、殺してやりたいわあ~」
踏んだり蹴ったりなつくしは、その日は終始不機嫌であった。


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