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つくしは沢山の仲間達と歩きながら、盆踊り会場に到着した。
最初はミキとミキの姉の家族で出発したのだが。
其所はつくしの事、途中のコンビニでクラスだった友人達と出会したのだ。
当然立ち話から、行き先が盆踊り会場であった事から皆は意気投合して大集団となった。
会場に着く頃には、30人近い集団に膨れ上がっていた。
つくしはミキや親しい男友達数人とで、屋台の有るブースを回り始めた。
「やっぱり、屋台と言えば先ずは此れだよね!」
左手には割り箸の片割れに、雲の形をした白い固まりが巻き付いている。
白い固まりにつくしはかぶり付いて、小さい口をパクパクと動かす。
「うん、美味しいなあ。祭りには欠かさないよねえ」
「つくしはわたあめと、金魚すくいは必ずしてたよね」
「うん、今日は水中ヨーヨー取りたいの。金魚すくいすると、あたしのは直ぐ死んじゃうし」
「ウチのは三ヶ月位だったかなあ」
「盆踊りさぁ、武志が太鼓叩くのも恒例になったよね」
「そうなんだ。武志は毎年なの?」
つくしは隣を歩く、同級生の宮谷に訪ねた。
宮谷はつくしとは、席が隣同士で成績も優秀で競う程に拮抗した仲でも有る。
現在は地元の市役所に勤め、今や三児のパパである。
「一番上のガキが、私立受かったから大変なんだよ」
「へぇ?そうなんだ」
つくしは少し目線の高い、宮谷を眺める。
「京都の英徳女子大学の幼稚舎なんだよ」
つくしは首をガックリ下げている。
「そ・・・そうなんだ・・・」
「なんかさ、特待生受験したら受かったんだとよ」
『確か、優紀んとこも行くって言ってたような?』
「牧野?」
「キャッ?な・・・・なにっ?」
「優紀って何、お友達?」
毎度の心の声を披露してたらしく、つくしは天を仰ぎながら額を抱えた。
「あたし・・・またかあ」
クックッと笑いながら、宮谷もつくしを仰ぎ見る。
「良いけどさ、あんま見せんのもな」
「へ?」
「独身だったら口説いてたわ」
ポッとなりながら、つくしは宮谷を殴ろうと追いかけるも。
「つくし、足首見えてるよ」
ミキの一言に、つくしは足を取られそうになり宮谷の肩に体重を掛けるも。
「牧野重たいっ」
余計な一言に、つくしは宮谷の背中を叩いたのだった。


気付いたら大団円が出来て、最初の曲が流れている。
「つくしっ、始まっちゃってるよ」
「そうみたい、ミキ急ご」
地元の音頭に合わせて、大団円はゆっくり進みながら動いている。
つくしとミキは、それぞれ離れた場所で綿菓子を食べ尽くした。
「急がないと・・・あっ、武志が叩いてるね」
大団円の中で先程会った娘とその後ろで、祖母のたつえが踊りながら進んでいるのが見えている。
つくしが辺りをキョロキョロすると、会場から少し離れた土手に司がふて腐れながら座り込んでいる。
司はつくしを探しているらしいが、見つからないのかあちこち忙しなく見回しているようだ。
祭りの曲に誘われて、司の回りには子供連れの女性等が近くで様子を観察しているらしい。
勿論、司はそれも慣れてるのか、全く関心が無さそうだ。
つくしは知らん顔で、踊りの輪に入って行ったのだった。
『やっぱりな・・・・、あの鈍感女にはオレがどんだけ苛ついてっか分かってないな』
「司様、あれは牧野様で?」
「そうだ・・・な。此方がどんだけ苦労してっか分かってないらしいな」
つくしの着物姿は、多くの男達からの視線を独り占めしていたのだが。
踊りに夢中なつくしは、その無防備な仕種がどれ程司を挑発し仰っているかは全く分からずじまいだった。



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「つくしさん、用意は出来ましたか?」
汐里が和室の座卓で、煎茶を飲みながら寛いでいる。
最初は入室を拒んだが、そこは名うての女中勤めでそれも年配女性には逆らえず。
『あたしに遠慮しないで、素直に頂きなさい』の一言。
つくしはコンシーラーと、肌色の下衣を着用して何とか誤魔化した。
ミキがパタパタと、コンシーラーを肩甲骨に塗る。
「つくしちゃんたら、愛されてるのね」
ミキの含み笑いする声に、俯きながらも。
「ミキ、うるさいよっ」
穴があったら入りたいつくし。
髪をお団子でてっぺんに結い上げ、一部を項に解れさせてバレッタで止める。
群青色の大島紬に、キラキラ光るバレッタにナチュラルピンクのグロス。
黒みがかった帯を絞めると、着付けは完成した。
「はい、完成。肌白いから、虫刺され(愛の跡)隠すの苦労したけど」
「ミキっ・・・一々、うるさい」
「でも祭りの会場では、ナンバーワンかしら」
ムフフ笑いしながらも、ミキはそんなつくしを誇りに思っているのだ。
「彼氏さん見に来た婆ちゃん達、後世の土産とか言ってたしね。何も無いこの場所には、有難いものよ」
「そうなのかなあ」
「私達も支度するから、お付きの姉さんにでも見せてあげれば」
ミキは襖を開き、隣室で待機する汐里の元につくしを誘導したのだった。
「つくしさん・・・」
絶句状態で、呆然とする汐里。
「あたし、似合ってないですか?」
汐里はプルプルと首を振るばかりで。
「いや・・・似合います・・・」
此れは不味いかもしれないと、汐里はヒヤヒヤしている。
同姓の自分ですら可愛いなあ、と思ったのだ。
「屋台にはお供しますよ」
「大丈夫よ。ミキ達も居るんだから」
つくしは屋台を回る位、友人達とだけで楽しみたいのだが。
「司様が黙って居るとは・・・」
「・・・・・・。」
煎茶の入った湯呑みを一口含み、大きい溜め息を付くつくし。
「あんのバカ男は・・・」
「バカ男・・・とは、ひょっとして?」
「ひょっとしなくても、ですから」
湯呑みをダンッと、派手な音で座卓の上に下ろした。
「あんのバカのせいで・・・」
派手な音に驚いたのか、隣室からミキが急ぎ顔を出した。
「つくし?」
「ミキ、祭りさっさと行こっ。やっぱり、癪に障る・・・あったま来るんだから」
ミキは『ヤレヤレ』と言いながら、縁側の敷石に下駄を指してつくしを呼んだ。
「つくしのだよ」
「良いの?」
首を振るミキを横目に、つくしは鼻輪に足を通す。
夜空に塗り立てのペディキュアが、光っている。
団扇と小袋を携え、ミキ達と連れ立ってつくしは祭りの会場へ足早に向かってしまったのだった。

汐里はつくしに黙って、つくしの着物姿をこっそり写メに収めておいた。
手に負えなくなったと堪忍したのか、『緊急事態です』と此方に向かうもう一人の主人に送信した。


『あの鈍感女、又キョトキョトしやがんのか』
SP代わりに付けておいた人間から、つくしの浴衣姿を写メで見るや否や『車のスピードを上げろ』だ『国土交通相と運輸局は黙らすからやれ』と始まったのだから。
運転手は心筋梗塞スレスレであろう。
天下の『道明寺HD』がスピード違反は、物笑いの種になりかねない。
(あきらと総二郎が聞いたら、ネタにするのは間違いないだろう)
車中で暴れそうになるを、冷静と言う刀で成敗したのはここぞの時の『秘密兵器・西田』だったのは言う迄もない。
世界有数の大企業の御曹司も、つくしに掛かれば何らその辺の男と変わりはないのだった。


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車はミキの邸に到着すると、つくしと汐里を下ろすと来た道を戻る様に発進して行った。
ミキの邸前にある、立派な木彫りの門構えに圧巻されるつくし。
「F4」や桜子や滋の住む豪邸よりは、小さいがこの辺りでは名家なのだ。
「西門さんのとは、違うけどね。優紀なら分かるんだろうな」
「あ、次期家元夫人のですね」
「うん、博物館に勤めてたのよ。子育てが忙しくなったみたいで、辞めたみたいだけど」
つくしの親友の優紀は、古い史跡や寺院建築の造詣が深い。
華道や香道は免許皆伝であり、仏教にも詳しいせいか寺院や神道の重鎮からの信用も厚い。
神道のバックは、皇族だからだ。
「あたしなんかよりも、苦労したから。プライドは高いんじゃないかな」
「若宗匠はその位な方の方が、頼もしいでしょう」
「汐里さんは、皇宮警察官でしたもんね」
「恐れ入ります。前に何かの茶会の行事だったか、ご夫妻で参列なさってたのを拝見した事がございます」
「もしや皇居ですか?」
「佐用でございます」
格のスケールに驚きながらも、思いを遠く子育てに奮闘する優紀に馳せてみる。
「優紀にも会いたいなぁ・・・」
つくしが木彫りの門に手を触れていると、法被を着た武志が笑いながら手を上げた。
「つくし・・・祭り・・参加すんだろ?」
日焼けした筋肉質の身体は、シックスパックに割れている。
「うん、盆踊りなんて久しぶりだし」
「今年は思考も、凝らしてっから。屋台にも顔出してけよ」
類を思わせる風貌に、つくしはこの感じがどうにも疚しさを感じてしまう。
『メランコリーな気分で、酔いしれながら盆踊り参加も悪くはないかな』
散々好き勝手にしてたんだからと、ちょっとは困らせてやりたくなるのだが。
『やっぱり男に会ってんじゃねーか』と、ドヤ顔で言いたげな表情が浮かんだのだろうか。
「わああ・・・っ」
武志が変な物を見る様に、顔を突き出しながら腕組みをしている。
「何でも良いけどさ、さっきから駄々漏れしてんぜ」
ハッとしながら、我に返る。
つくしがキョロキョロしながら、左右辺りを見回すと。
近所の人々や、ミキの邸の家政婦がつくしを眺めて立ち尽くしているではないか。
恥ずかしさで茹で蛸になるつくし。
「あたし進歩ないのかなあ」
「いきなり変わってたら、それはそれで怖いんじゃないか」
つくしが武志を見上げようとした時。
「パパっ・・・」
武志はつくしから目線を反らすと、つくしの背後から駆けよって来た少女を抱き上げる。
「海荷、ママどうだったんだ?」
少女はキラキラと目を輝かせながら、武志に抱き付く。
「ママ、今日はお風呂に入れたんだって」
「そっか、海荷もお姉ちゃんだよな」
海荷と呼ばれた少女は、小さいお団子頭に子供サイズの法被を着ている。
赤い鉢巻を巻いて、小さい口には紅を指して。
代わる代わる二人を見る少女。
「パパ、この人だあれ?」
つくしを指で差しながら、無邪気に武志に聞く少女。
「パパのお友達だよ、つくしって言うんだ」
つくしの顔を見ると、ニコニコ笑いながらつくしに挨拶をした。
「こんにちはー、つくしちゃん」
「つくしちゃんじゃなくて、つくしお姉ちゃんだろ」
「あ・・・そっかあ」
海荷はパパの武志に似て、顔のパーツはお姫様を連想させる。
将来が楽しみになりそうな、海荷の容姿。
「こんにちは」
「遅れたわ、これ長女の海荷。先週、妹も生まれたんだ」
武志は二児の父親として、町内でも頼られる存在となっていた。
「奥さんは、未だ病院なの?」
「明後日に退院してくるんだ」
「頼もしくなったんだ。今日の太鼓叩くのも、カッコいいね」
そのやり取りを見た海荷は、武志の頭にすがり付く。
「海荷のパパ、太鼓上手いんだよっ。パパ大好きっ・・・」
海荷が嬉しそうに武志にじゃれ付く姿を見て、つくしは祭りの会場へ一足早く行く事にした。
「つくしさん?」
汐里はつくしの後に付いて、一緒に向かう。
「屋台も覗いてみよっか?」
その時である。
「つくし、着付けしてくれるってさ」
ミキに呼び止められ、つくしは邸に連れて行かれる事になった。
浴衣の着付けをしてくれる事になったのだ。


ホテルでは、ラフなドレスシャツにスラックスで司がパソコンを眺めている。
本社の亜門からで、今週末には戻れと帰還の催促が出ているのだ。
カザフスタンやブータン等の、鉱山資源発掘とインフラ整備や政府や王国の要人との会議も組まれている。
亜門と最後に会った時には、『これ以上、日程をズラすと株価が下がりかねない』と念押しされているからだ。
つくしとの仲が何やら、雲行きが怪しくなりかけている。
「気分晴らしに、祭りを見に行かれてみては?」
「西田が行きたいだけじゃねーのか?」
「毎日ホテルに缶詰めも、仕事でなければ」
司もあれで中々頑固なのであるが、経営者は臨機応変でなければならない。
ましてや、女性絡みは尚更だが。
司はしぶしぶ、つくしが参加している祭りを見に行く事にした。
何か有りそうだと、野獣の直感は鋭く訴えていたからだ。
良い事も悪い事も、司はつくしが絡むならば受け止めようと腹を括ったのだった。




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無言の車内が、こんなにも重苦しさを感じたのは警備経験でも初めてだ。
汐里は短期間ではあったが、内親王殿下を間近で御守りした事もある。
彼女達は家柄や育ちの環境で、静かにしていたものだ。
しかしつくしは、全くの庶民である。
この小柄で取り柄も無さそうな女性に、自分が終生お仕えするのかと思うと首を傾げる。
「あ・・・のぅ」
「はっ・・・はい?」
素っ頓狂な声に、運転手すらもびくびくする。
「牧野様は・・・」
「いやだ、あたしより目上なんですから。つくしと呼んで下さいな」
「さ、流石にそれは・・・」
「あたしより年上ですし、司や類達と違って友達ではありませんので。お仕事なら、タメ口は駄目ですっ」
「では、つくしさんと呼ばせて頂きます」
「はい。・・・つくしで良いのに」
つくしは何か不服そうに、口をとがらす。
「いいえ、私はつくしさん付きで道明寺邸にヘッドハンティングされました。今後はタマさんや、椿様付きのSPの方と一緒に私は終生お仕えする予定でございます」
「終生?って」
「司様とご結婚なさるとは、そういう事なのでありますよ」

「そうね。もうすぐ、自由に外を出たりも出来なくなるし」
「御友人の方からは?」
「浴衣を用意出来たのと、櫓が完成したんですって」
『夢を乗せて走る車道・・・』
運転手がつくしに気を使って、FMを掛けてくれたようだ。
「あ・・・。あたしが高校の時に聞いてた曲・・懐かしい」
「つくしさんは、この頃に司様とお会いしたのですか?」
「いいえ。司とは会ってないんです。この頃には、NYの学校に編入してたそうなんで」
「もう昔からのお知り合いとばかりと思ってましたので」
司とはパーティー会場、それも数年前のだ。
考えてみれば、昔から知っていた『F3』とは縁が無かったのも不思議なものである。
「司との出会いは最悪でした。あの頃に戻れるなら、もっと素直になりたかったかな」
「司様は後から、お見えになるみたいですね」

『愛される為に羽ばたく様なBaby love』
歌詞に合わせて、軽快ながら切ない曲が耳に引っ掛かる。
あたしは否定的にしか考える事出来なかったけど、その一歩を踏み出す時が来てるの・・・かな。

つくしの心に、今迄あった蟠りと言う名前の砦が陥落して行ったのだった。

全ては明日への旅に向かっている、今迄の自分に決別する代わりに明日の自分に会う為。





短くてすみません。
猛暑がかなりしんどいせいか、頭が痛くなる事もあります。
つくしの心境が、少しずつ変化していくのを上手く書けるか・・・によります。
クライマックスは、見えてるんですけどね。



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翌日。
スマホに光る点滅画面を、つくしは急ぎタップする。
腰の鈍痛にしかめながら、ミキの単語にギョッとする。
「あ、今晩だった」
「もしかして、男・・・」
の単語が出るなり、後ろから強烈な鉄拳をお見舞いするつくし。
「あんた・・人の顔見ればそれしか言わないよね!」
「オメエは毎回どっかしらで、男が居るしな」


つくしは溜め息を付くと、司の腰向けて蹴りを入れる。
「何しやがる」
「それでよく経営者?笑わせんなっ。少しは余裕持つ位の度量になれっつーの」
つくしの一言から、二人は又もや喧嘩になり最後には司の「勝手にしろ」で現場は騒然としている。
部屋の表ではSPと秘書の西田が、ヒヤヒヤしながらも終息するなりホッとしている。
「牧野様に付いて行くべきでしょうか?」
女性SPの山野汐里は、油汗を掻いている。
先程、道明寺邸から到着したばかりの新人SPだ。
『皇宮警察官』から、ヘッドハンティングしたばかりでつくし付きのSPになる予定である。
「山野さん、牧野様をお守りする事は既に始まってます」
「え?もうですか?」
「牧野様は未来の道明寺総帥夫人になる方です。何かあった時は、詰め腹切る覚悟をお持ち下さい」
西田が訓戒を説くつもりで、語り出しているとつくしが出て来た。
「牧野様?」
「あたし、友人達のとこに戻ります」
「ならば、彼女と一緒に車へお連れします」
つくしは頭を振るものの。
「牧野様、それでは私達が司様から咎められます。司様の婚約者になられてるも同然です」
「でも・・・」
西田とSPの山野が、頭を下げてつくしに頼む。
「どうか、お聞き届け願えますか」
つくしは渋々、頷いた。
「御友人の方々の前では、でしゃばりませんので。只、司様の配慮はご承知下さいませ」
山野はつくしよりも、3つばかり上だが思慮深そうに話す。
つくしはデニムのジャケットに千鳥模様のスカートで、野球帽にサングラスの装いを新たに出て来た。
首元はスカーフを巻いて、腕もアームカバーで覆った。
「暑くないですか?」
「ちょっと暑いけど、友人達を待たせる訳にも行きませんから」
「司坊っちゃんは?」
「知りません。あんなバカ男」
つくしは大股で、ロボット歩きをしながら部屋を出て行った。
西田は頭を抑えながらも、無表情で汗を拭う。
暫くすると、司が無表情ながらもふてくされている。
『毎度の事とは言え、此れならばビジネスの案件を成立させる方が楽だ』
西田も司も、この時ばかりは全く同じ事を考えていたのだった。








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「類様、もうすぐ到着なさいます・・如何致しましたか?」
オレは車中で、遠いパリの空に思いを馳せていたらしい。
「何でもない・・なのはと、会った頃が懐かしくなった」

ギャラリーに付いたオレは、なのはが着いてなかった事に驚いた。
母さんがあたふたしてるけど、別に何を焦ってるんだと思ってたら。
暫くしたら、タクシーらしき車から華奢な女性がラフなワンピースで下りて来た。
「る・・・類さん。ゴメン・・・なさいませ」
たどたどしい日本語で、必死に此方へ歩いて来る・・・なのは。
ブラウンアイの奥からは、泣きそうになっている。
「なのは、駄目だよ。焦るな・・身重なんだし」
結局なのはは、フランスの裁判では不起訴になった。
花沢や美作果ては道明寺が、後ろ立てとなり彼女の人権保護を世界中に訴えた。
なのはは特例で『フランスからの退去』、日本へやって来た。
オレはなのはと交際の末に、結婚した。
最初は反対もあったが、『同性愛』や『一生独身』よりはマシと言う理由。
年齢もだし、なのはは『花沢』の事に全く関心を持ってなかった。
それよりも『英徳大学』で、勉学したい・・・と言ったのが意外だった。
出産が終わったら、入学手続きをする事になったなのは。



花ギャラリーの、オープンセレモニーが終了した。
なのはは左手に嵌められた指輪に、見いっていた。
「私・・・幸せです」
「それは良かった」
シルバープラチナの交差した渦に、彼女の誕生石の『アクアマリン』を埋め込ませた小ぶりのリング。


日本へ向かう前日。
トスカーナの小さな教会で、二人だけの結婚式を挙げた。
なのはは『自分には勿体ない』と、結婚も躊躇った。
その彼女は牧野の面影を残すも、牧野とは全く違う。
シンプルなワンピースに、パールを散りばめたアクアブルーはなのはが蛹から蝶に変わる瞬間。
二人だけの式を挙げた。
式の後友人達と、細やかなパーティーで祝った。
披露宴はビジネスも絡み、メープルの大宴会場を貸し切り開かれた。
記者会見等は類が一人で質疑応答し、今も語り草となっている。


「類さん、又、動いてます・・」
たどたどしい日本語すら、愛しいなのは。
「花沢の未来が、この子を照らす様に」
此れからなのはを連れて、学園に向かう。
新しい命に学舎を、見せたくなったから。


3ヶ月の間で、

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葉巻を燻らせ、息をゆっくりと吐き出す姿すら魅了する司の存在につくしは惚ける。
『素直じゃないあたしの、何処がいいんだろ?』
自分の頑固一徹過ぎる欠点は、女性として悲しくもなる。
仕事の時はそれで良いのかもしれないが、可愛い気の無い事は珠に仇となる事も有る。
司は無表情に険しく、眉間に青筋を立てている。
端からには『何時もの表情』に映るのだろう。


しかし司を知る者からすれば、直ぐに見抜かれてしまうのだ。
無表情の様だが、傷付いた感情で葉巻や煙草を吸うのはよく有る事。
肘を付きながらも、タブレットPCを開き『メール・チェック』をする。

暫くすると、横文字一面の画像を見ながらカタカタとキーを叩く音が響いてくる。
『凄いな。もう仕事の顔に戻ってるんだ』
つくしは背中越しから、司を見つめている。
「つくし・・・」
「な・・・なにっ」
突如呼ばれて、つくしはソワソワする。
「そんなに、オレ様にみとれんな」
つくしの元に座り込み、つくしの髪をグシャグシャにする。
「あたし、何で素直になれないんだろ?」
「何でそう思うんだ」
「人に頼るのが、あたしは苦手だから。もう家族の事で苦しんだりとかは無いんだけどね」
「その割には、お袋さんペラペラ喋ってくれたな」
千恵子に会った時の、話を司は切り出した。
「ママったら、何でもかんでもお喋りなんだから」
「静か過ぎんのも、怖くねーか?」
「そうだけどっ」
司は立ち上がると、側にある冷蔵庫からウォータードリンクのペットボトルを取り出す。
蓋を開けて勢い良く、喉を鳴らしながら飲む姿。
「飲むか?」
「お、おう」
警戒心丸出しながら、つくしはそっとペットボトルを受け取る。
「おい」
「だ・・・だって」
「しねえよ、半病人には・・・つくしでもな」
指で頬をなぞる司に、つくしは尋ねた。
「お仕事は?」
「西田には指示を出してあっから。亜門もそれなりの判断能力も備わってるから」
「寝首掻かれたりは?」
「そんなヤワじゃねーよ。亜門や西田に何かあっても、道明寺の屋台骨は潰さねーし。んな事なってみろ、世界恐慌だ・・・な」
「そうなのっ?」
「あのな、此処来て迄仕事の話すんのもかったりいから」
「あんたが遠い人に感じたから・・・」
「あ?」
司の仕事に打ち込む姿は、つくしが知ってる彼からは想像以上の存在に見えた。
「あんたの顔で知らない部分を見た感じしたから」
「オレ様に惚れ直したか?」
「ちょっと・・・・ね」
全部とは言ってしまうと、自分がその辺の女性と一色単に見られる事に腹立たしくなる。
自分の頑固一徹さは、簡単に直らないとつくしは諦めつつも。
つくしはスタンド台で、点滅するスマホを眺めやる。
グリーンランプが目に入り、画面に触れるとミキからのLINEメッセで『地元の盆踊り大会』への誘いだった。

いよいよ、ファイナルが近づいて来ました。
本日も読んで頂きまして、有難うございます。


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静はイタズラっ子みたいな視線で、オレを眺めている。
オレは照れながら、目線を反らしつつ。
かいつまんで、なのはの話をした。
「分かったわ。なのはさんの事は、お引き受けするわ。彼女の名誉回復と、人種差別は切っても切り離せないもの」
移民と難民を履き違え、差別が無くならない背景。
「なのはさんも、気の毒だわ。身内にテロリストが居る・・・だけで、差別もこの上無いし」
「オレは彼女の力になりたいんだ。彼女が何かをした訳でもないのに、いきなり連行とか可笑しいだろうし」
「それは、つくしさんの影響なのかしら?」
「牧野じゃない、と言えばそうとも限らない。でも一人の女性が偶々身内に?それだから必ずしもそうなるもの?オレは彼女を魔女裁判に、晒したくないだけだ」
牧野は世界中を相手にする様な状況で、親友への想いを貫いて幸せを掴んだ。
なのはには未来が有る、彼女の可能性を出来る範囲内ならオレが引き出してやりたい。
ビジネスに繋がるなら『才能や可能性有る若者を支援したい、彼女を守ってやりたい』と思う。
オレは富裕層に生まれたが、心の奥は貧困以上に貧しかった。
コミュニケーションも取れない、一歩間違ったら『引きこもり』みたいなものだから。
その自分を解放してくれたのは、牧野だった。
非常階段繋がりの、妹みたいな女だった。
彼女から教わったのは、『自分から逃げず、前向きに生きる事』。
世の中には生きたくても生きられない、人達も居る。
病だったり、政治的な理由だったり。
『花沢』のブランド名で、自分が出来る事を模索して行く事で救われる人が居るならば。
オレは牧野の生き方から、学んだ事を実践する事にした。
その第一歩、一人の少女の未来を潰さない為に。


すみません、かなり短めになってます。
この頃には、既に違う話も書いていたりとバタバタしていた記憶があります。


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下半身が重たいのと、気だるさにつくしはどうにか目を開いた。
頭痛も少しするのか、今にも吐き気を覚えかねない。
「痛い・・・よぉ」
ヨレヨレながら、何とか上半身を起こしてベッドに放置してあるバスローブに手を伸ばした。
しかし不安定な体制で、取ろうとしたのが淵つたいから転落して悲鳴を上げる。
「ンッ・・・」ローブを取り、小さな手で茂みを隠そうとした時。
ジワリとしながら、愛液やら精液が再度溢れて来る。
姿身の鏡から、目を背けようにも最初よりも更に所有権を示す如く増えている。
こんな理不尽な想いを、自分ばかりするのは嫌だと言いたくなるつくし。
「よぉ、気分はどうだ」
水滴をしたたらせ、ストレートになった『フェロモン』ダダ漏れにした司がタオルでガシガシと水滴を拭う。

ポタポタと垂れる雫まみれの司に、つくしもご多分に漏れず目を背ける。
「んだよ、見惚れてんの?減るもんじゃねーだろ」
つくしは近くにある、クッションを投げるも力が入らず空しく落下するばかりで。
「こ・・・こっ・・・・こっ・・・・」
「何時から鶏になっちまったんだ、つくしちゃんは?」
こんなにも余裕綽々で話される、司に腹が立つ。
「あんた・・・死んじまえっ」
「あ?お前、頭の先迄おかしくなったか?」
「・・・あたしは、・・・ウッ」
吐き気と下半身の鈍痛に、しかめながら司の足元を小さい手でペチペチ殴るつくし。
「あたしの前に表れて、いきなり・・・」
「んだよ」
「伯母さんと・・・喧嘩して・・次は」
「次?」
「あたしにナンパした・・・」
「それがどうした」
「あんたには、相応しい女の人・・・沢山居るでしょ」
「考えた事ねーな・・・お前もしや他に好きな男居たのか?」
「何でそう・・・なっちゃ・・痛ッ」
シャワーを浴びたかったのに、痛みにしかめる。
司はつくしの華奢な身体をお姫様抱っこで、バスルームに運んで行く。
「離せ・・・っ、自分で行くのっ」
「つくし一人じゃ、無理だろ。洗ってやっから」
「嫌だ」
「安心しろ・・・何もしねーから」
「怪しい」

それから2時間後。
白湯を飲みながら、つくしは身体を半分起こして部屋を眺めている。
司の事は全く見る様子はない。
「つくし」
「・・・・。もう別れる、付き合いきれないっ」
散々好き勝手にされて、猛暑に関わらず薄着も着れない。
「オレにその気はねーな。お前だって、散々よがって楽し・・・」
「もう、あんたなんか・・・いや」
司はつくしの隣へ、優雅に腰を下ろす。
「オレは、お前しか興味ねー」
黙っていれば、どんな絵画よりも様になるのに。
ビジネスにも全てに、結果を出せるのが司。
そんな極上で、何でもやりたい通りに生きて来た御曹司。
金も地位も容姿も羨まれる男は、つくしの顔を包み込み触れるキスを繰り返す。
シャワールームでは、口がふやけるばかりにキスをしていた。
「あたしは・・・普通の人と恋したかった・・」
「何だよそれ」
「あんただけじゃない。金持ちの男じゃなくて、生活に困らない位で良かったの」
「それって、差別じゃね?」
差別をされた事は沢山有るが、していたとは想定外な言葉だった。
「つくしの普通って何だ?オレが金持ちだから、差別するのか?」
「そんな・・・つもりは」
「女つうのは、バックか容姿で人を判断すんの好きだよな」
司は葉巻に手を伸ばしながら、年代物のジッポーで火を点した。

『あっ・・・あたし、又怒らせちゃった』
何でこうも司を、怒らせるのだろうとつくしの心中は自己嫌悪に包まれるばかりだった。


本日も読んで頂き、有難うございました。
もうすぐ締に向かって、頑張ります。

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花沢物産の執務室で、秘書の田村からメールが入るなり『調査書』と表示したタイトルをクリックした。
なのはの兄がテロリストとして、フランスでお尋ね者になっている事。
両親は父親が亡くなり、母親がベルギーの親戚宅に身を寄せて居る。
最近は病がちで、満足な治療も受けられず何時悪化してもおかしくはないとあった。
オレが警察に面会に行けば、パパラッチが騒ぎ出すから・・との理由で田村からは忠告があった。

オレは久々に『静』とのアポを取り、『弁護士事務所』へ向かった。
最近になり小さいながら『オフィス』を構えた静は、受話器口で幾分興奮気味な声で応対した。
『つくしさんから、やっと旅立てるのね』
あのさそれは寧ろ、牧野に言ってくれと思ったオレだが・・言わなかった。
牧野とは『オレの妹』みたいな存在で、こんなオレを初恋の存在と言って何時もドキドキしている女だった。
大きな瞳と、真っ直ぐな黒い髪で華奢な身体つきが印象に残っていた。
オレが愛読する本の背表紙には、『牧野』と一緒に写る写真が挟んである。
三条の盗み撮りした写真だが、何か気に入って捨てる事を出来ずにいた。

そんな牧野も親友の妻として、今や三人の母親だ。
来月には4人目が産まれるとかで、親友は益々世界中を駆け回る『財閥総帥』として闊歩してる。
『あたしが今幸せで居られるのは、類が何時も励ましてくれたから。今度は類が幸せになって欲しい』
と、静から聞いた時には苦笑いしかなかった。

静と久々に再会した時、オレは時の早さを感じた。
彼女はチャコールグレーのスーツで、ナチュラルメイクに『ベリーショート』だった。
此れがかつては『藤堂商事』の、令嬢とは想像付かないだろう。
「待たせたわね・・・あら、何か?」
「いや、風貌変わったんだと思ってさ」
「何年経ってると思ってるのやら、仕事してるのと時間ないから短めにしてるのよ」
静に奥の席を進めると、彼女は直ぐに注文した。
セルフサービスで運んで来た、耐熱性の紙コップ。
それに口を付ける姿は優雅だけどな。
「元気そうだね」
「息子と二人暮らしだったから。今はお腹に新しい子が居るの、来年の春に産まれる予定よ」
静は台湾系のフランス人事業家と、再婚していた。
籍こそ入ってないが、今のペースで幸せだと言う。
「彼ったら、司のグループ企業の取引先だったのよ。よくよく、縁が有るんだわって」
妊娠6ヶ月の割には、マタニティーな感じを受けないから不思議だな。
「息子が藤堂キャピタルに興味有るらしくて、来年にはスイスの寄宿舎へ行くのよ」
月日の流れる事が、こんなにも早く感じるのは年を取ったんだなとオレは感じていた。





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