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クロッチの隙間からタラリと、甘い蜜が溢れている。
「・・・い」
白く細い足元を拙い、御影石は蝋が凝り固まりメラメラ妖し気に光る。
何時から、イヤらしい女に変貌したのだろう。
思えばパーティー等へ、二人で参加するとつくしへの視線や注目が半端無かった。


NY出張から帰国して、自分の誕生日に入籍した。
桜の満開な3月に披露宴を挙げて、新婚生活を満喫しようと躍起になっていたのに。

会社の業績が上がり始め、司は海外出張が増加の一途で新婚どころかストイックな日々。
つくしも最初は淋しいと思っていたが、仕事の名目でレッスンやらスクールに通ううちに忙殺されて行く日々。


司はつくしが淋しがってる、と思っていたのだが。
色気が更に増して艶やかな女性に変貌していた。
誰にでも隔てなく笑い、明るく振る舞う。
春風の様な温かくも、優しく気遣う。

帰国したばかりで、急ぎパーティー会場へ到着してみればつくしは彼らの中心でニコニコしているではないか。

F3もいたし、友人達と語らっていた。

司は直ぐにでもつくしを、連れ去りたかったのだ。
が、当主として経営者としては、駄目だった。

何百万の従業員や、株主達に突き動かされ彼は仕事に邁進するしかなかった。
司の周りには金臭い男や、化粧臭い欲まみれな女が幾重に囲み視殺を試みた。

反吐が出る位に、不快さが増して行く。
つくしには世間のイケメン達へ、全身を曝すように視線が集中して居る。
つくしは結婚していても、本人のお構い無しに男達からはアピール攻勢が強くなっている。
「今日は孫と姪を連れて来たんだ」
「司様、今日はお目にかかれまして・・・」

挨拶は適当に流し、急ぎ会場から離れて出張に行ったのは先日迄の話。

つくしを久々に抱えて、寝室に向かおうとしたのに。
肝心のつくしは、クロッチから生々しい蜜を溢れさせる。
表向きは紳士な筈が、日が沈むと同時に司は夜の獰猛な猛獣に変貌する。

愛する妻が女の顔をもたげて、司を挑発するのだ。
パーティー会場の男性参加者は、こぞってつくしにセックスアピールを迫って来る。
シルクのローブからは、固く上向いた突起をプルンと震わせる。
はち切れそうな位に、上げ寄せると固い頂上を舌で舐めずり出した。
妻は逃げ出そうとするが、足を高く上げられた隙間に指を複数突き立てられ蜜はドクドクと湧いて来る。

「あぁ・・・んぁ・・・いやあ・・・」

つくしの聖女が、性女へと夜の帳から放たれた。

司は今ダビデ像の裸体を晒け出し、美に目覚める妻を食卓で調理し始めたのだった。



よもやのエセエロ・・・にしては、グダグダですみません😣💦⤵️。

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桜の巨木に鎮座する御影石で、華奢な身体を丸めながら腕を横たえて惰眠する女が一人。

ブラックドレスをまとったつくしは、目を閉じて桜の花びらがハラハラと舞い散る中で春の暖かさに身を委ねている。

微睡み口を小さく開きつつ、何かを囁いてるもそれは聞き取る事は至難だろう。

そのブラックドレスの開く胸元から、今にも零れ落ちそうになる果実の蕾へ手を伸ばそうとする不埒な男。

毛糸玉の如くにクシャリとした、波打つ髪にパーフェクトボディの神が降臨したドレスシャツでヴィンテージパンツ姿。
落とす気になれば、誰かれ女は落とされたいと願う男。
その男、道明寺司には全く食指が湧かない。

見た目女は見飽きた上に、計算に長けて、欲望ばかりはみ出すごうつくな女は要らない。

惰眠の女に心を奪われた司は、つくしが起きる事を願うばかりだ。
桜の下で目を開き、女を知る喜びの涙を見たいと思う司。
男性のシンボルが、核弾頭状態でロックオンされたままなのは拷問に等しい。
つくしを女に変える度、核弾頭を甘く柔らかい果実で包まれたい。
その下で泣き喘ぐ姿は、どんな女よりも愛しくて可憐過ぎる。
どんな宝石やセレブな姿に身を包んでも、つくし以外の女は只の木偶の棒なのに。

小さくあどけない唇がモゾモゾするだけで、つくしが言霊を発すれば天に上ってしまいそうだ。

ファビュラスで小さい桜の精は、つくしと言う。

「あ・・・あん・・・つか・・・」

司は座り込むと。
ブラックドレスの上から、果実をなぞり首筋にスルッと舌でなぞった。

甘くて、少し塩辛さの残る匂い香。
谷間を謎っただけで、ジメっとする蜜蕾。
甘い甘いガムシロップを、細く長い指にまとわりつく。
上半身を抱え込むと二つの固い果実を指で押して潰す。
桜の花びらを、果実に添えながら甘く噛む。


甘美で危険な誘惑が惑わすならば、甘んじて受けてたとうではないか。

ブルッと小さく震わせながら、大きな瞳が静かにトロンと開き何かを呟こうとした時だった。


つくしは魔物に魂を売り渡した悪魔に、絡め取られ食される寸前となっていた。



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暖かい日差しが照りつける、広大な敷地と邸宅。

都心部のから少々奥張った、豪邸通り。

少し先を行けば『皇居』に次いで、日本有数の大富豪達の邸が構える超一等地の高級住宅街。

その中で一際目玉つ車の出入口前に、『警備員』が常駐しBGとセットで強面がお出迎え。

今日は此処の女主人でも有る、『つくしの誕生日』。

つくしは一昨年に、此処の当主である『道明寺司』と入籍した。

本来は披露宴を開く予定だったが、経済情勢と『女帝薨去』が立て続きに起きた為。
友人達とパーティーを開き、今日はパーティーから開放され静かに過ごしていたつくし。


つくしは道明寺邸の一角にある、『プチトリアノン』に有る水車小屋と草花が植えられた場所がお気に入りだった。
此処は去年、植木職人や著名な庭師が大掛かりな整備をしたのだ。
苗木やら、奈良の吉野山に合った桜の木を移動したり。
苔むした御影石で、『不老不死』を表現し。

完成した折りには。
道明寺邸の使用人や、友人を招いて『ティータイム』や『野点』を行ったりしている。

昨日からは『山桜』や『山ツツジ』も、咲き始めてチューリップの花も開き出している。

ついでにつくしは、夜に咲き乱れ・・道明寺邸の風紀が乱れるのは毎晩欠かさずである。

御影石に照り付ける、光で石が暖まりそこから眺める『花達のコントラスト』がつくしのお気に入りだ。


鮮やかな折々の花に囲まれた御影石の上に、毛布を掛けて踞り眠るつくし。


寝る事が大好きなつくしは、そこかしこで寝ていて有る時は数日間風邪で寝込んだ事もあった。
その事は司をどれだけ、怒らせたにも関わらずだ。

世界中の一人だけの麗しの女が、ぱっくりと司の前で口を拡げ眠っていた。


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誹謗中傷等のコメントは、固く御断りしております。
今日は俺ら『F4』のマドンナっつうか、ヒロインなのか、ベイビーなのか、妹分の牧野が嫁に行く日。

先週、突然結婚式を挙げると三条から聞いた。
連絡はイギリス、フランス、NY、マラケッシュと世界中を駆け巡って大騒動。

静も滋も、優紀ちゃんも、和也も、清之介も飛んで来て、それぞれが相手かを疑っていた。

一番疑われたのは、司と類だったな。

三条から聞いて、目が点になったのは、本当に普通どころかバツ1のコブ付なオヤジだったそうだ。

『道明寺財閥』『花沢物産』『茶道西門流』『美作商事』の御曹司が、恋焦がれ憧れた女がまさかの結婚。

それも普通の会社員、それも自費出版の編集長。
赤字すれすれの会社、もっと良い会社は無かったか?

三条も滋も、何度も問い詰めて牧野は首を縦に振らせなかった。
そんな中で、静が牧野と話をした時に『自分を普通に見る男性だから』と言ってくれた。

F4の影に苦しみ、英徳のジャンヌダルクと名前が膨らみ、牧野つくしの名前は一人歩きし出していた。
オレらもネームバリューに苦しんだ、牧野はネームバリューに生活苦に苦しんで更に一人の人間として、小さな身体で想像以上に辛かっただろう。

それを出さず、毎回バイトを入れ替わり立ち替わりで振る舞い続けて10年近く。
普通の生活で金銭感覚に、価値観を持った王子様でもない小男みたいな風貌の男。

『あたしが名前の無い女として、静かに生きて行ける場所。パパみたいな、優しくて良い人なの』
大きな瞳を輝かせ、綺麗に笑う。

椿と桜子がデザインしたドレスに、滋が用意したアクセサリー。
静はとびきりの靴を用意して、優紀はベールと手袋を準備した。

教養と素敵なドレスに身を包んで、オレらは腕を組んで最高の女として送り出す『牧野つくし』を不幸にすんな。

牧野が幸せな顔で嫁いでくれるのが、オレらも誇りを持てるんだ。
マドンナが幸せと、オレらの愛を受けて新しい世界に旅立つ。

オレ達の最高の妹、君が幸せになって何時も笑ってくれたら心おきなく旅立てるから。


と、つくしはベッドの中で睦み合う誰かを相手に、夢心地にさ迷っていた。


それが誰なのかは、彼らの誰かはたまた違うのか。
愛を叫びたくなる、罪な女は『牧野つくし』。


何か歌を聞いてたら、ウチはこうなってました←。
つかつくは、別のアーティストになるんよなあ。

今日もお越し頂きました、10人の読者様に感謝。
『F4』とつくしですが、楽しんで頂きましたら。

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話はつくし達が、メープルへ来た前に遡る。



『ホテル・メープル』にある漆黒塗りの立て看板。
金箔の様な鮮やかな文字色。
『本日の団体宿泊御一行様』なるを記載してある。
その隣は『西門流・春期茶会会場・柊の間』なるお誂えの看板。

その看板を囲み、華やかな振袖やワンピースに身を包む女性達がインスタにアップしようと自撮りに勤しむ。

因みに西門流の茶道は、複数の流派が茶道を催す予定だ。

立礼式は初心者でも参加可能。因みに会費は、それでも10000円である。
正客を呼ぶ方は、相場に習って十万円である。
しかしながら、『ホテルメープル』で十万ならば安い方だ。
茶会であるが当然ながら、立礼式の方にしか一見さんは入室不可能な催しだ。
懐石料理を含めても、此れでかなり安い。
次期家元である『あのF4』の一角が、主人を勤める。
それで十分話題になるのだ。

主人役の総二郎は、かったるそうな欠伸で肩を回している。


総二郎の正客を勤めるのは、『花岡清庵』である。
この女性『華道界の次期女帝』だが、大層な美女で経済界や政治家との繋がりも深い。
華道花岡流の当主に一席もてなすのだが、総二郎は気が重い。

妻の優紀が仏門修行期間中で、気が立っている。
にも関わらず数日前に、彼女は妊娠が発覚したから尚更だ。

女性との交際は、ほどほどにしていても長年の習慣は改められない。


優紀はつくしとは、先日に会っている。
『パンケーキを食べに行かないか?』と、つくしに誘われた。

優紀もスイーツは大好きだ、妊娠してなければ一緒に行っていた。
その次期家元夫人、女としての楽しみよりも『亭主を懲らしめたい』との思惑がある。



司はつくしが中々捕まらない事に、イライラが収まらず今日も執務室はシベリア並みの冷気に包まれている。


昨日も営業部からの見積りトラブルで、社員の一人がバクーに飛ばされている。
「西田、牧野の行方は未だ分からないのか?」
まさかメープルで、スイーツを食べて居る事は流石の西田も知らない。
先日司がSPを付けていた事に、つくしに嗅ぎ付けてからは『別れるから、探さないでよっ』と担架を切られてしまったばかりだ。

秘書軍団は思った。
御曹司の過剰なつくしへの嫉妬心さえ無ければ、とは口から出かかっている。

併し秘書軍団もSP集団も、失業すれば只の無職である。
人によっては、住所不定迄付きかねない。
世知辛いこのご時世に、失業は避けたいところだ。



ペアンのお話を整理していましたが、メド立たず此方を引っ越ししました。

短編で不定期ですが、宜しくお願い致します。
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研究室から拉致されて、つくしの診療室へ雪崩れ込んだ二人。
つくしは何が何だか分からず仕舞いで、間名瀬から話を聞いて受けるか考えて返事をしようと考えていた。
が、つくしは考えて考えて、無限にループした果ては結論を出せないで明後日の考えになった前科が有る。
司は今回を逃すと、又つくしの事だ。
情に絆されて、選択を誤られるのはNYの告白だけで良い。

『道明寺HD』の株価が乱高下すれば、NYどころか帰国も出来ずつくしは別の人生を選択しかねない。
つくしは誰とでも、上手くやっては行けるのだろう。
司はつくし以外の女は、置物以下でしかない。
経営者の名前に縛られ種馬にされ、ワーカホリックのまま棺桶に突っ込まれるだけの人生。


回避するには、道明寺HDを強く大きくするだけだ。
つくしは司の手を取った。
司の手を離したら、自分を見失って後悔に苛まれそうで。
『あたし(オレ)が、幸せにしたいのはあんた(お前)だけ』
意思の通じた二人は、控室の奥に誂えたベッドの海へ消えて行った。

白鳥「あの二人はほっといて、藤原さん世話になったね」
藤原「いいえ、お元気で。牧野先生の結婚式か、間名瀬准教授の教授昇進が先か」
間名瀬「私もアメリカで勉強して来ます。心理学の本場で、勉強し直しですよ」
藤原「良いではありませんか。金髪の奥様を、楽しみに待ってますよ」
白鳥「じゃ、行っちゃいますか?メープルのバー、道明寺さんのツケで」
藤原「そうですね。真っ昼間から、お熱い時間を邪魔は・・・オホホホ」
間名瀬「では、行きましょうかね」
藤原「西田さん・・・と、おっしゃいましたかしら?」
西田「委細承知致しました。司様の方には、伝えておきます」

各々は当初の目的から、方向はずれていたが全ては『終わり良ければ全て良し』で結局二人の痴話喧嘩に振り回されただけだった。

彼らは『慰労』と言う名前の飲み会で、散々飲み食いする事で二人への細やかな報復をしていた。


当然ではあるが、楓の知る由となり半年間のNYに抑留となりつくしを味わう時間が取り上げとなった。
司の欲求不満が爆発する事は、つくしの平和を脅かしかねなかった。

仮眠室のリフォームは、完成したが主は相変わらず不在のまま。
つくしの『愁訴外来』は、相変わらず男性率が高い。


『道明寺、待ってるんだからね。あんたも浮気しないで』
つくしは司の使用している、万年筆を使用している。
何時も司の存在を感じていたくて。


平和な『愁訴外来』の日々だった。
FIN

やっと終わりました❗
一昨年、書き始めた『ジェネラルルージュ』『ペアン』シリーズのスピンオフになります。
が、本編は未だ始まった時に大スランプとブレーキで書けなかったんですよ。
終わらせたくとも、書き掛けが何作も有りまして。
いずれは終わらせたいと、思っていますが。
本編を書き始めたら、どれだけ修正掛けられるか不明です。



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藤原「牧野先生・・・あらあら、急いで出て行かれたと思いましたら」
間名瀬が、資料を取りに研究室へ来た事をLINEで知ったつくし。
確かに到着してはいたが、御曹司様の襲来は想定外なようで想定内でもあった。

車が院内に入った瞬間、研究棟に向かうつくしの姿が司の目に入った。
せかせかと急ぎ、焦りながらも口元を綻ばせる表情に司の野生の直感は研ぎ澄まされて行く。
あの表情は男か、食欲旺盛な時に出るものだ。
棟には食堂は無い筈だし、そもそもつくしが食堂へ行く前に拉致して司はレストランに連行するだろう。

つくし「え、あ・・・藤原さん?」
白鳥「つくしちゃんも、隅に置けないよねえ。良い男捕まえちゃうのに、間名瀬准教授かあ」
司「うるせえ。つくしは俺だけの女だ」
つくし「はぁ?あたしは誰の物でもないの。あたしはあたしの」
司「男はオレだけだな」
藤原「それは今更ですよ。白鳥さんの送別、聞いてましたか?」
白鳥「聞いてないよね~。僕は明日の飛行機で、ヨーロッパに行っちゃうんだ。その後任を連れて来たからさ」
白鳥とはリヒテンシュタインの王立病院に招聘され、医療監査関連の仕事で赴任する。
連れてやって来たのは、司と西田である。

が、西田は道明寺HDの社員である。
と、なれば残るは司であるが。
司はどう考えても、『道明寺HD』の御曹司。
司「牧野」
つくしのキョトンとする顔に照れ隠しに、デコピンする司。
つくし「キャッ、痛ぁ~い」
司「カマトトじゃねーだろうが。優しくしてやっから」
話が脱線して、二人は夫婦漫才になりそうになるものの。
間名瀬「牧野さん」
司「何だ、お前」
言い終えないうちに、ガツンと鉄拳が落ちて来る。
つくし「年上の方に失礼でしょ」
司「肩書は下だろ」
間名瀬「中良いんですね。此れでは私の入る幕はありません」
司「命有るだけましだな」
つくし「あんたは黙ってて」
間名瀬はつくしに気持ちを、伝えたかった。
しかしつくしの煮え切らない、思わせ振りな態度がはっきりしなかった。
つくしにはそんな気持ちは無いとしても、何故か踏み切る事を躊躇していた。
間名瀬は敗北を認めてはいたが、最後の望みを心の何処かで少しだけ期待していたかった。

なのに、心も気持ちも晴れやかだった。
赤い糸と言う物は、きっと有るのだろう。
間名瀬の赤い糸は、海の向こうに見える気がした。



次回でファイナルになります。

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殺気立つ車内は『何時死地へ向かうに等しい』、閻魔もダンテ(神曲)もセト(古代エジプトの死神)やはたまたハデスも近寄りたくはないだろう。
司の嫉妬心が首をもたげると、敏腕秘書も厚労官僚も黙りを決め込む。
今は巻き込まれて、内臓破裂にこそならないだろうが前科を圧力で消すレベルの司。
西田「司様、未だそうと決め付けるのは早計・・でもないですね」
白鳥「あ、そうなんだ。確かに、つくしちゃんならなあ」
司「名前呼ばわりするな。オレの特権だ」
西田「牧野様はどうにも、隙が有りすぎますのが・・」
司「学生の頃から変わらないな。あちこち、キョトキョトするのは」
白鳥「まあ、そこが良いんだよ。患者さんも安心してくれるし」
司「患者だろうが、関係者でも男はダメだ」
白鳥「子供が多いのに?」
司「男はダメだ。死に損ないのジジィもだ」
西田「牧野様が道明寺HDの株価と、明日を担ってらっしゃいます」
司「西田、善は急げだな」
「「・・・・・」」

つくしの未来は明るいのか、犠牲の精神を強いられるのかは目に見えている・・・のかもしれない。


つくし「間名瀬先生、如何しましたか?」
間名瀬「学会で使用する、資料を研究室に置き忘れて来たから」

シルバーの眼鏡に、やや色褪せた茶髪を撫で付けた『チョイ悪オヤジ』を匂わせるも白衣を着用すれば医師である。
間名瀬「心理カウンセラーも定着したとは言え、まだまだ知名度は低いから」
つくし「間名瀬さん、カリフォルニアに行かれるんですよね」
つくしは前屈みで上目遣いに見上げた。
彼は思わずつくしの腕を掴んでしまう。
間名瀬「牧野先生、カリフォルニアに一緒に来て貰う訳には」


「行くなら、てめえだけ勝手に行きやがれ」
つくしの体をかっさらい、本来の所有者に返却された如く身動き取れぬように抱き上げた。




「え?ち、ちょっと何?何であんた・・・そもそも何でいるの?」
「亭主が妻に会いに来て、何が悪いんだ❗」
「はぁ?あんたと何時結婚してました?あたしは、籍入れても居ないじゃないの」
「籍入れりゃ、良いんだな?相性も愛情もバッチリだしな」
「いきなり来て、何なのよ。そもそも、何しちゃってくれてるの」
研究室で夫婦漫才が始まったものだから、間名瀬は呆然としていた。
が、彼の表情は苦笑いで固まっている。
この二人の間には、自分は只の間男にしかならない事。
『完敗ですね・・・でも清々しい』
つくしが自分の前では見せない、自然な表情や柔和さ。
彼女は気付いてないのだろう、それだけは言わないでおこうと思った。

間名瀬の優しさと、人生の門出をひっそりと決意した間名瀬とはうらはらに。

「信じらんない・・・もう、知らないうちにSP付けつけてたとか、あり得ない。このストーカー」
「お前は男が途切れない日はないだろうが」
「知らないし。あんたの好きな女の人を選べば済むでしょう。世界中からエントリー来るわよ」
「女?只、工事しただけだろ」


この二人の劇場は、未だ続くのであった。



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「アリアドネって、確か危急を存じた時に発生する究極?」
「ええ、そうなのよ。法医学教室の危機だったかしら?女優の樹本ありさだったかな。満里奈の妹だったよね」

法医学教室のドラマで、看護士の田川伊都子とつくしは盛り上がっている。
看護士として、10年目のベテランで最近は外来患者の付き添いでつくしの室内に立ち寄る。
以前伊都子の祖母が、入院する事を不安がって駄々をこねた時につくしが応対した以来の縁である。
伊都子は不安定な状態に陥った祖母を、見抜けず看護士ながら落ち込んでしまった。
身内がその立場になると、穏やかに居られない時こそつくしが必要とされるのだ。
『愚痴外来』と揶揄される由縁だが、つくしに聞いて貰っただけでも救われたと伊都子は感謝している。
「あの刑事達に犯人がね・・・」
一頻り会話を終えると、見計らった様に藤原婦長がコーヒーの、入ったマグカップをトレイに乗せて来た。
藤原婦長「伊都子先生、一時期は大変だったみたいですね」
伊都子「もう落ち着きましたから、牧野先生。その節はお世話になりました」
つくし「いえいえ、あたしでお役に立てて良かったです」
藤原婦長「間名瀬准教授と、デートのお時間も大事ですよね」
つくし「あ、いやいや。でも・・」


つくしは白鳥達との引き継ぎを終えたら、メープルに併設されているトラットリアで待ち合わせていた。
過去はもう過去のままであり、未来では無いから。
終わっている事を振り返っても、出て来るのは後悔する事に苦しむばかりの自分だけだ。

「そうね、道明寺とはもう過ぎた話だしね。あたしには、あたしの分に叶った人生も有る」
「牧野先生、愁訴外来の患者さんはそれに励まされているものですよ」
「は・・・はぁ。あたしは能天気なだけですから」

藤原婦長の言葉は、能天気を装ってるようで実は的を得ている。
珠に皮肉が交じり、乾き笑いで茶を濁したりで誤魔化す事も有るが。
愁訴外来は確かに、困る事は無いのだ。
理学療法でも行き届きにくい、心のケアの更に必要とする患者や家族は大勢居る。
入院生活の愚痴から、看護士達とのコミュニケーションと多岐に渡るのだ。
自分よりも他人を優先するつくしには、天職では有るのだが。


そのつくしがダメな点は、お人好し過ぎて患者に入れ込む事。
もう1つが異性に、異常な程にモてる事を自覚出来てないのだ。
見た目は普通過ぎるのだが、つくしは患者やその家族は言うに及ばず。
偶々病院に来ただけの、面識すら無い男性をも惹き付けた事も有るから始末に終われた。
大臣の息子に見初められた時もあり、友人達が取りなして回避したのも昨日の様だった。
伊都子を見送って、藤原と談笑した後につくしは間名瀬からのLINEを確認するなり早足で室内を出て行こうとした。
「牧野先生、如何なさいましたか?」
「実は・・・」




白鳥は偶々つくしの好みではなかったし、既婚だったので難に遭遇しなかった。
栄転となったのは、渡りに船だった。
その後任として肩書きこそ違うが、つくしの事を知り尽くしている男は野獣の直感で感じ取っていた。
『なんで准教授程度のレベルに、キョトキョトするのか』
何年経ってもつくし以外の女は、判別すら付かない男が『道明寺司』なのである。
その司が煙草を吹かし、青筋を立て始めた。
運転手は死地への旅立ちな車中の雰囲気に、ハンドルを握りしめていた。

彼らの明日は何処に有るかは、着いてからの司の機嫌次第であった。



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「あら、牧野先生。もうすぐ、白鳥さん達がお見えになりますよね」
デロンギのコーヒーメーカーに、最高級の豆をセットし辺り一面は芳ばしい匂いに包まれている。
白鳥とは、妻の久美子経由で知り合いになったつくし。
久美子はつくしが赴任する前の、大学の先輩で心理学を勉強したりランチタイム等も一緒になったりと世話になった。
久美子は厚労省官僚の圭輔と、婚活イベントで知り合って結婚式を挙げた時にはつくしも参加したのが懐かしい思い出だ。

間名瀬准教授とも、授業公開で知り合ううちに食事に行ったりする事も増えて行ったのだ。
職場と寮の往復では、知り合うきっかけも生まれなかった。
が、つくしの場合はそうとも言い切れないとも言う。
類やあきらに頼まれて、パーティーの同伴もあった。
しかし今の病院になってからは、『愁訴外来』の仕事やら理学療法の勉強に学会参加も多々増えている。

教授選やら、理事選も絡むとつくしも駆り出されるのだ。
「間名瀬さんも、カリフォルニア州大からお話有るみたいですから」
マグカップを棚から取り出して、コーヒーを注ぐ。
つくしは紅茶を飲むが、最近はコーヒーも常飲出来る様になっていた。
しかしながら、隣の仮眠室に大きいベッドやらソファーが持ち込まれて来た事は安眠妨害になりかねない。

数日前に突然、仮眠室をリフォームする不可思議な事が起きた。
つくしは寮に戻っているし、何ら困る事はない。
他の医師達も、通いか寮に居るからだ。
つくしは珠に、夜勤を頼まれるが専ら子供の話し相手位だ。
『何か嫌な予感するんだよなあ』

つくしの鈍さは健在である。


白鳥が新天地への赴任を考えている隣では、司が目を閉じたまま高校時代に脳内で戻っていた。
『牧野様はアリアドネの存在みたいだ』と、西田に言われた事が有る。
あの頃の司は手に負えない乱暴者で、母の楓が金で解決を計り更に悪化するばかりだったからだ。

つくしの出現は、あれだけ素行に手が付けられなかった司の首に鈴を付けた様なものだ。
司はつくしに依って、人間としての感情を取り戻し素行を更正させたのだ。
『アリアドネ』は、最愛の人間が迷う神を救ったとも言われている(諸説あり)。

英徳学園に神が降臨したかの如く、民衆(生徒達)は羨望の眼差しを向け彼らを賛美する意味合いでコールが起きた。
その光景に目を背け、神と謳われた彼らに刃なる素手と言動。
牧野つくしが彼らに、現実社会での覚醒を促した。
アリアドネの糸であり、究極の珠になり得し存在。
司にとってのアリアドネ、彼女は身体を張って対峙した話。
しかしながら、つくしには自然消滅と信じて完全にその話は過去の出来事。
仕事に没頭する日々の彼女には、全く只の知り合いレベルな認識でしかなかった。

間名瀬准教授とは、同じ専門分野で尊敬出来る数少ない異性だった。



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