総二郎は優紀がつくしを連れて退席したのを見計らい、奥に有る貴子の病室の扉を静かに開けた。
点滴の音と、心電図のモニター音か無気味に時を刻んでいる。
貴子は目を閉じたまま、疲れきった表情で真っ直ぐ天井を向いたままだ。
ベッドの奥の個室で、一心不乱でノートパソコンを開き英文のメールを見いるのが『世界経済の中心』に居る美貌の男『道明寺司』である。
「珍しい事もあんねんなあ。牧野以外の女は置物扱いするお前がな」
「あ?オレは目撃しちまったからな」
「牧野、優紀に絞られてシュンとしとったわ」
「今の牧野は殻に込もっちまってんだ」
「ったく、何時まで良い人ぶるん?ホンマ見てるこっちが我慢大会だわな」
結婚後に京都の本邸へ戻り、茶道と言う日本文化を世界へ広めようと飛び回る次期家元の西門総二郎。
その家元夫人こそ、つくしの親友で後ろに引っ込んでいた優紀。
優紀の『ファンタジスタ』な存在として、それを引き出したのは総二郎だ。
優紀の隠されていた本性、それは高貴さを保つ自分達以上の高貴さを併せ持ち『大名の姫君』の如く凛と筋の通った今時の女性には珍しい大和撫子。

と、思えば女性の命である『髪』を下ろし『仏門修行』に勤しんだでだ事も有る大胆な女性である。
「死と隣り合わせと思えば、髪に拘る必要はありません」
この大胆さに、総二郎は将来の伴侶と決めた経緯が有る。
その総二郎から見れば、司の行動はイマイチ理解に苦しむのだ。
以前の司ならば、躊躇する事なく『道明寺』のブランド力とビジネスセンスで全ての道を壊しては作り変えて来た。
が今の司は『石橋を叩いて渡る』並みに、慎重である。
「牧野が警戒してんのは、オレや総二郎の後ろに有るブランドって厄介な物だ。結局、その名前が何時まで経っても一人歩きしてる現実だ」
「牧野の父親は金と言う幻覚に最後迄苦しんで、命を断ってしまった事に変わりはないな」
「生まれながらとは言えな。珠に道明寺の名前に嫌気が差してくる」
「それでもな、司とて好きで此の家に生まれた訳ちゃうやんか。子供つうんは、親を選べんよってな。それは親も変わらんわ」
司はメールのチェックをしながら、総二郎の言葉に耳を傾けつつカタカタとキーボードを時折叩く。
「牧野は何をそんなに、司へ敵意を剥き出しにすんねんて?」
「道明寺を通じて、金で物事を進めようとする者への強烈なアンチテーゼだろうよ」
司はやりきれない悔しさで、室内の壁に拳をぶつけるのだった。
「お前が悪いばっかちゃうやん」
「今の道明寺HDを率いてるのは、オレで有る限り牧野の敵対心は消えねえって事だ」






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