つくしは優紀と共に、再度車中に戻り元来た道を引き返して居た。
「優紀、あたしより強くなったんだね」
「そうかな?仏門修行してから、少々の事では驚かなくなった位やで」
「仏門て?西門さんの女癖の悪さ?」
「あのねえ、確かに一理無いとは言わんけど。茶の世界と仏教や寺院関係は、密接に関係しとるんよ。お茶は禅宗から伝えられたんやから」
「お茶のイメージて、千利休しか知らないよ。あたし、優紀の短髪にビックリした」
「あ、そうね。高校生の頃やわ。もう、恥ずかしい」
「小僧みたいで可愛いんだもの」
そう言ってつくしは、ギョッとした優紀の眉間辺りを触り始めた。
「つくし・・・総二郎さんみたいな事せんといてよ」
眉間から、頭頂部を触り出すつくしは嬉しそうだ。
「あ、やっぱりやるんだ。このジョリってするの気持ち良いんだよね」
「つくし、根性曲がってはんな」
「あんたに言われたくないっつーの」
つくしは何度も優紀の、いがくり頭を弄る。
「せやから、ウィッグ付けてから行こう思ったんよ」
「ウィッグ持ってるの?」
意外な表情のつくしに、優紀は足をずらした。
「公式の茶会や、教室では付ける事も有るわ」
「優紀、西門さんに愛されてんだね」
「さぁ、今はどうかしら。子供が幾らいても、全然な世界やし。出産マシーン扱いするとこ有るけど」
余りにズケズケ言う優紀に、つくしはどぎまぎするばかりだ。
「病院での台詞は嘘だったの?」
「茶会ではしょっちゅう、あの人女性と接してるから。でもね、道明寺さんは絶対にちゃうで」
大声を出してしまい、優紀はお腹を抑える。
「優紀、お腹大丈夫?子供さん迄驚くよ」
フゥと息を整える優紀に、つくしは慎重になるも。
「こんなんでこの子驚いてはるなら、あの家には相応しゅうなれんて。橋の下に置き去りにしはるわ」
「ちょ・・ちょっと。せめて」
「冗談やから」
「子供さんの事?」
運転手もミラーを通じて、表情が固まってしまっている。
「子供・・・ね。知らないうちから、レール敷いて有るのも淋しいけど。伝統芸能の世界やから、仕方の無い事なのよ。はぁ、やっぱり剃らなアカンわな」
優紀は自分の短い頭頂部を、さらりと触れる。
「剃るって、ツルツルに?」
「せやけど?何で?」
「勿体ないなあ、綺麗だったのに?」
高校生の頃の優紀は、ウェーブ掛かり日の光に照らされた時は金に近い美しい毛髪だった。
「総二郎さんが毎回してくれるんで」
「想像付かないなあ。でも嬉しいでしょ、優紀は」
「うん、幸せかな。何も出来なかった総二郎さんが、此れは日課みたいにしてくれるんて」
人の幸せの価値観は、何を基準にするのかはつくしにも分からない。
が、優紀の場合は自分自身を愛する人の前で曝け出せる環境らしい。
「道明寺はんの事は、短格に考えたらアカンよ。章太はん言ったかしら?あの人は良い人にはなれても、それだけにしかなれんよ。つくしはもっと、強く広い視野を見るようにしてや」
「優紀、あんたみたいに今は強くなれないよ」
つくしは未だ決断を、付けかねている。

今は貴子の容態の方で、頭が一杯だった。


翌日。優紀からの連絡で、つくしは会社に出社した。
『貴子さんの事は、私が見舞うから仕事場へ行って謝罪しなさい』
なるメールで、つくしは優紀に感謝しながら。
つくしは会社で、同僚の美子や上司に謝罪した。

美子「その日は私も携帯忘れたのよ、ごめんなさいね」
つくし「美子、ゴメンね。今後は連絡付くように、携帯の電源は入れておくよ」
何も変わらず干渉しない会社、と同僚の美子の存在。
つくしには、それが何より有り難かった。
章太とはつくしの顔をチラと見たが、周りの目もあって接触は出来ずじまいだった。
章太との事も、決断に迫られるつくしであるが。
いざとなると、迷いを消せないのがネックでもあり己の弱い部分でもあった。
その頃、特別室では。
数日ぶりに、貴子の意識が回復していたのであった。

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明後日のアップを目指しています。
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