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ふりしきる雨の中、ビニール傘を持ちながらあたしはバシャバシャと音を立てながら歩く。
校舎の裏に有る大きな桜の木に手を当てている。
息を吐き出しながら、心臓の鼓動をうつろな表情で聞く。
あたしは此処の校舎を離れ、遠い場所に旅立つ彼と秘密を共有した。
英徳学園高等部の『卒業証書授与式』と、プロムなるダンスパーティーを終えたその日の夕刻。
あたしはドレスを纏い、盛大なダンスパーティーへ誘われた。
家が貧乏だったから、プロムに参加するなんぞは夢の様な話だった。
シンデレラのエピソードに近かったけど、あたしは彼の申し出を断れなかった。

『オレは春から、パリに旅立つんだ』
あたしの初恋の人だった『花沢類』から、それを聞いたのは3日前。
突然の話にあたしは、心が置いてきぼりを食らった様に座り込んでしまった。
『大分前から、話は出てたんだ。やっと、本決まりしたもんだから』
あっけらかんと告げた類と違って、あたしは付いて行けない位にショックだった。
「そんな事っ、何でもっと早く知ってっ・・・」
「牧野だから言えなかったんだけどさ」
「全てから卒業する・・・みたいだね・・・」

校舎の桜は蕾が膨らみ始め、もう少ししたら満開の花を咲かせるのに。
あたしの心は散らされて、バラバラになる程のショックだった。
初恋でありあたしの憧れ、絵本の中の王子様が目の前に表れたらこんな風の理想を描いた人。
あたしは心地良さに漂い、そのまま流されて持っていかれても良かった。
しかし運命と言うものは、時に残酷な方へあたしを翻弄して行った。
あたしの殆どを独占して、狂愛して止まない彼に出会ってしまった事。
あたしは拒否をしていたけれども、純粋ながらも狂暴さも兼ね備えた思い。
どうしても拒めない・・それはそれで、何ともならなかった。
卒業式と同時に、彼は旅立って行く事に。
あたしの一部が血を流して、泣いている。
「最初に見つけたのは、オレだったのにな」
類は淋しそうながらも、何か楽しそうでそれが不気味にも見えた。
「このまま、アイツに渡すのって何か腹立つ」
あたしは最初、類が何を言ってるかは分からなかったけど。
卒業式を迎える夜0時の日。
あたしの初夜は、類と契った。
初めてを受け入れる事は、嬉しい反面で。
何処かに疚しさも抱える、十字架を背負うみたいな。
「牧野とオレの秘密だよ・・・」
黙ってこのまま親友に奪われて行く事よりは、あたしの一部が悲鳴を上げた事から成立した。
『秘密を共有する事で、あたしは桜に宿る魔物の女』に生まれ変わったから。
あたしと類は共犯になったのよ。


この秘密は何時か、バレて行くだろう。
『あたしは生きて居られるかな?いや、しぶといかもね』
怒り狂ってあたしを殺そうとするのかな?
それでも心の一部が流した血よりも、全然なのよ。
類をさっき空港で見送って、あたしは校舎の桜に本当の事を懺悔しているの。
ゴメンね・・あたしが、優柔不断だったから。
そんなあたしは、秘密を抱えて今日も『修行』の一環で邸へ向かう。
魔女はお見通しだったけど。
『人には幾つもの、顔があるわ。その一つに過ぎないのだし、あの子も何時かは分かる時が・・来ると信じるわ。ビジネスと思えば、小さい事よ』
頭は一生上がらないけど、あたしは秘密を抱えて次のステージに向かって行く。



『ちょびっと、鬼畜?な類つく』で、思い付いて書きました。
つかつく大好きな皆さん、類ファンの皆様ゴメンなさい。

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