待ち人を思う(連載中)

待ち人を思う〜22〜

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貴子の住む『漁師町』は彼女が若かりし頃、リゾートブームが沸き起こり関連会社がこぞって土地の持ち主宅に押し掛けた時代。
不動産やバブルが一気に弾けるその瞬間を狙い、当時の総帥だった『道明寺楓』は貴子を訪ねて来た。
それはつくしに、『ジュラルミンケースに1億』で司と別れを強要したのと同じケースだった。
二代に渡り、牧野一族とカネで揉めた道明寺楓。
しかしその楓も、現在は『高級老人ホーム』に入居している。
そのホームは、司の姉である『椿』とアメリカ人の夫が経営を担っている。

楓は去年、脳溢血で倒れた。
経営会議の最中に、突然うめき声を上げて意識を失った。

病院へ搬送され、マスコミやメディアをシャットアウトして秘密裏とされた当時。
パパラッチや報道機関と、取材合戦で世間を賑わせたものだった。
実情は半信麻痺が残り、リハビリを懸命に行っていた最中更には認知症を発祥していた。
経営どころか、会社を忘れ、家族の顔すら見分けが付かなくなる楓。
司を見れば、嫌な顔をしては病室で暴れる。
椿の顔を見れば、自分の母親と言い出す。
楓は司の母親で有る事を放棄したように、病室に籠る日々になった。
幼い頃は経営に多忙で、母親らしき事を何一つも出来なかった。
だからこそ大人になってから、ようやく母親らしき日々を取り戻そうとリハビリに勤しんだ楓。
それが認知症によって、その機会は永久に閉ざされてしまったのだ。
司は総帥の座に着いた事で、楓の仕事を引き継ぎ漁師町に出向いたりもしたのは最近になってからだ。
つくしの事は触れない様にしてきた。
今もつくしの事は大事に思ってはいるが、総帥であり自分の軽はずみな行動が大企業強いては世界経済を、破滅に追い込みかねないのだ。

今日も事務所では、つくしがグラフを片手に営業の戦略を宣伝担当と話し合いをしている。
日経雑誌を睨み付けながら、次のブームの一手を話し合っている。
「やっぱり、今年はギンガムチェックがブームだからこれを推したいですよね」
女性向け雑誌や、日経雑誌を広げてはわちゃわちゃと『あーでもない』『こーでもない』と話し合うも平行線のまま。
終業のチャイムが鳴り響き、つくしは机に頭を伏せる。
「何かさ・・・うやむやをスッキリしたいね」
「よし、今日はとことん飲むかあ」
部署の一人が音頭を取った事で、つくしは再度飲み会に参加する事になった。
「オレも行くからさ・・」
「章太」
「大丈夫、つくしを叩く事はしないからさ」
「あのねえ‼」
つくしの額を、軽くげんこつでコつく章太。
けれどもそれが、今は心地良さを感じる。
「牧野はオレの事・・・どうよ」
「へ?いや・・・そのっ」
つくしは再度の緊張感に包まれ、飲み会どころか酔えなさそうな自分にどこかで白け気味であった。
テーブルのセンターを、経済雑誌の紙面が占拠している。
雑誌の紙面では、誇らしげに豊富を語る司の写真が女性社員の歓声にボルテージが上がり出す。
「もうね、置いてくよ・・」
つくしと美子の呆れ声に、人々は誘導されて行く。
つくしは紙面が目に入るなり、急ぎ頁を閉じた。
『あたしを解放して』『あたしは待ってるの?』
交差するつくしの心は、ゆらゆらと漂っていた。
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