待ち人を思う(連載中)

待ち人を思う〜23〜

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「今日もお疲れ様でしたあ〜」
美子のありきたりながら、乾杯音頭に仲間達もジョッキやグラスを上げては思い思いに、交わしあう。
場所は先日のお詫びもかねて、同じ居酒屋に決めた。
つくしと章太は座敷の奥で、美子も交えてミーティングを始める。
他の仲間達は煙草を吹かしたり、スマホの対戦ゲームに興じたりとまったりだ。
章太「伯母さん、大丈夫だったか?」
つくし「未だ会ってないけどね。面会謝絶だし」
司が居るから会いにくい、とは言えないのが本音である。
美子「何はともあれ、音信不通はダメよ。つくしは仕事終わると、携帯オフとかしょっちゅうだから」
つくし「今度は大丈夫よっ。勝さんから連絡も有るだろうから」
章太「けどな牧野の友人て、迫力有るなあ。オレさ、睨まれたもんな」
美子「そんなに怖かったの?」
章太「牧野をビンタするわ、怒鳴るわ。男でも顔負けだし、オレは京都の女性つうのあれは苦手だな」
つくし「優紀はそんな子じゃないんだよ。只、あたしがダメ過ぎるからね」
美子「うん。確かに、つくしなら分かるわ」
美子が頷くと、他の仲間や果てはカウンターの凪子迄『そだねー』と口々に伝染して行く。
つくし「なんで?あたし、そんなにダメ過ぎるの?」
章太「だから、オレが守ってやるって」
凪子「章太君なら、優しいし。悪くはないんじゃない?」
美子「どうかなあ。つくしは鈍いからねえ」
痛いところを、美子に突かれるつくし。
章太「オレはお買い得だぜい。変に気を使わないだろ」
軽くつくしにウインクする章太の存在。
美子達はヒューヒューと、囃し立てる。
美子「いやあ、お二人さんに当てられっぱなし。ウーロンハイ、柚子割りでね」
凪子も目を反らしながら、頷く。
つくしもグラスを傾けながら、取り皿に盛られた辛子蓮根を一つ摘まむ。
つくし「きゃあ~辛いっ」
凪子「此れでも何時もよりは、少なめだから」
つくしは半泣きになっている。
章太のさりげない告白は、つくしも分からなくはない。
牧野つくしの名前を捨てなければ、ならない就職したてだった頃。
括りを関係なく接してくれたのは、貴子等の身内や馴染みの友人以外では章太のみだった。
初めて赤の他人で、普通に話をした章太。
一番最初に章太と出会い、付き合っていたなら。
間違いなく章太と結婚を、意識した付き合いに違いなかっただろう。
英徳に通わないで、普通の高校生活を送っていたならば。


つくしの胸中で燻り続ける、存在感と想い。
『あんたの事を忘れられたらね・・・』
それは永遠に叶わぬ、つくしの願い。
優紀や仲間達は、つくしを影から見守って来たからこそ。
つくしには、幸せを掴んで欲しかった。
それこそが、苦しんで悩む者達を解放する事になるのだから。


「すまないが、外の空気を吸いに行って来る」
優紀が真名板の上で、林檎の皮を剥き始めていた時。
貴子は空気を吸いに、車椅子で院内を散策していた。
SPが二人付き、看護士と対話をしながらである。
司は肩を鳴らしながら、優紀の側で言った。
「はい、外は冷えてきはりましたから。お気をつけ下さいね」
「あぁ、迫田を待たせてるからな。何かあれば、頼む」
優紀は頭巾を、後ろに下げると慣れた手付きで再開した。


司は特別室を離れると、西田が恭しく会釈をした。
其れまで穏やだった司の表情は、一変して冷酷な表情を浮かべていた。
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