桜ほうさら(完)

君と出会った季節〜続・桜ほうさら〜中編

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星川は女が桜を一人で見に来たにしては、違和感を感じている。
この辺りの住人は、昔からの金持ちが多く住んでいる。
それも昔から『田園調布』『芦屋』『嵐山』『元町』に匹敵する、著名人の居住区が集中している。
女はその辺の服装に見せているが、アクセサリー等は一点物を見に付けている。
化粧も派手さは控えめにしている。
「あんたこの辺りに住んでるのかい?」
「だとしたら?」
「こんな公園に来るのは、珍しくないか?」
「ゴメンね。転倒させちゃったし、見ず知らずの方に申し訳ないわ」
「変わってんなあんた、服装こそその辺の人と変わんねーけど」
女はフフフと笑いつつも、大きな瞳の奥では涙を浮かべている。
「この桜を見る事も、当分無いからね。あたし、もうすぐこの界隈から離れるの」
「一人でか?」
「一人ではないよ。貴方が庇ってくれたから、この子が生きてられるわ」
星川は女が擦る腹回りに目線を、移した。
そんなに目立ってはいないが、幾分はみ出しつつある。
「尚更良かったわ、オレは人殺しにはなりたくない」
「有り難う、あたしもこの子に代わって御礼を言うわね」
小さく華奢な女性ではあるが、晶に比べると段違いに大人だなあと思う星川だった。
暗くなると桜の揺らめきは、怪しさと儚さの二面性が虚無感を更に際立たせている。
「桜の季節は短いけれど、あたしはこの時が好きなの」
「桜の下には死体が埋まっていると言ったけれどな」
「死体ではなくて、眠り続けてるんだわ。大好きな人に会いたくて、あたしもこの子もねそう思うの」
「会いたく思う人って、あんたのツレか?」
「腐れ縁な男だけどね。あたしを何時も好きとは、言ってくれるけど」
「ならば幸せじゃないの?」
「何時帰るか分からない人だもの。一人でポツンと待ってるのも、辛い時がある。そんな時に桜を見に来るの」
桜と女はその儚さがコントラストし、美しさを際立たせている。
星川はノートパソコンを、起動させるとふと思い付いたメロディーを打ち込む。
歌詞は未だ思い付かないが、曲が溢れ出して来る。
此れはもしかして、何かを掴むきっかけになるかもしれないと。
ボランティアで歌う生活も悪くは無い。
が、やはり一度は大きい会場を経験してみたい。
桜と同化する程の美しい女に、星川は魂を抜かれると死を覚悟した程であった。


そんな覚悟とは、違う覚悟を迫られる出来事に星川は遭遇する事になった。

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