つかさが不埒な行為に及ぼうとして、つくしはせっかくの花見気分が不機嫌モードになっている。
SPの女性や地元のシェフ等が、必死過ぎる態度は主人?で有る筈のつかさには皮肉にしか映らない。
「おい、主人はオレ様じゃねーのかよっ」
普段はつかさに仕える筈の西田でも、銀ブチの角度を直しながらやんわりと咎める。
「司様が余計な事をなさらなければ、済んだお話でございますが」
余計な事とは、心外な発言である。
つかさもようやくやって来た春の到来、と言っても季節の春では無い。
つかさにどんだけ誕生日パーティーで、数多の女の子や女性がアピールをしても一切靡かなかった。
寧ろ仲間達と喋ったり、つるんでばかりな事は楓やタマの心労を増やしていた。
姉の椿はそれを、楽しんでいる節も有るが。
今やタマの地位は確立され、つかさをまともに戻した?最強の使用人として揺るぎの無い存在感。
つくしが何よりタマを慕っていて、家族と離れて暮らす間は祖母代わり?に接したりしている。

車は田舎町を思わせる別荘に、たどり着いた。
近くには清流が流れていて、穏やかな水の流れと緩やかな土手に色々な花が咲いている。
少し先には、水車小屋と菜の花のコントラストが見えている。
小ぶりながら桜の木も、土手ぞいに植えられている。
つくしは車を下りるなり、走り出そうとする。
「わぁー、菜の花にチューリップだあっ」
「牧野様、花は逃げたりはしませんよ」
大きな瞳を輝かせて、はしゃぐつくし。
「キレイだねえ。あたし目の前で見たの久しぶりだよっ」
SPや西田が微笑しながら、つくしの後を追う。
つくしは太陽の様に明るくて、何時も人が回りに集まってくる。
使用人や家族に友人迄、つくしを見ては笑いながら穏やかに佇む。
つくしの周りには、誰かしらが側に居る。
同じように笑う人は居ても、つかさの周りに来るのは見返りを期待する連中ばかりだ。
大人も子供も、顔色を伺って寄って来る。
どうして自分の周りと、温度差が有るのだろう。
つかさはどうしても人を信用出来ない。
だからこそ、つくしの笑顔は眩しく映るのだ。
『オレ様には出来ねえよっ』
不意に孤独感が増長し、つかさの表情は曇りがちになって行く。
つくしに置いてきぼりの自分、何時かはそうなってしまうのだろうか。
名前に縛られて、何も出来ない自分に成り下がるのか。


「どーしたのっ?つかさ泣きそうになってる」
走り回るつくしが、ポツンと孤独に立つつかさに近づいてきた。
「あ?お・・・オレ様がんな、訳ねーよっ」
大きな瞳が上目遣いに、つかさの目前に迫る。
つかさはつくしの唇に、キスをした。
何時もなら叫んで、つかさを突き放そうとするのだが。

つくしには出来なかった。
「つ・・・つかさっ。あたしの・・・ふぁ」
「つくし、オレをおいて大人になんなよっ」
「そ・・れは、つかさだもんっ。あたしより、可愛い女の子居たらその子・・・に」
つくしはよく分かっている。
つかさのような少年と、付き合う事はどれだけ気苦労を伴うのか。
色眼鏡で見られて、心中は穏やかに居られない。
身分が月とスッポンみたいなもんだ。
「つくしよりかわいいのはいねえよっ」
「キレイなおんなのこ、たくさんいるじゃん」
「ビジュアルじゃねえよっ」
つかさはつくしの顔と手にキスをする。
「つかさいつも一人でかわいそうだよお」
「オレはつくしが居れば、気にしねー」
つかさが人一倍淋しがり屋なのを、つくしは分かっている。
「あたしいなかくさいのに」
つくしは田舎臭いと言ってるが、心が純粋で擦れていない。
学校に通う少女達とも違い、つかさは自分を誉めたくなっていた。
「つくしは最高だからなっ。オレがつくしを守ってやる」
「あたしはまもられたくないよっ。あたしはあたしだもんっ」

つかさの心は、つくしに鷲掴みされてしまっていた。
「坊っちゃま、牧野様。お弁当の準備が出来たそうです」
SPの一言に、つくしの目は輝き出す。
「おべんとう、たのしみだねえ」
『つくしが笑ってくれんのが、オレは楽しいけどな』
つかさが不埒な考えを持ってはいても、今だけは見て見ぬ振りをしていた。
道明寺HDの未来が、掛かって居るからだ。
『牧野様が大人になる頃には、司様が頼もしくなると信じたいものであります』
SPと西田と使用人達の、細やかな願いである。
つかさの未来は、つくしに掛かっているのだった?


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