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世紀の記者会見は、表面上は誰もが羨む一組の美しいカップルに見えた。

しかしこの二人は、演技巧者の俳優と女優であった。
株主や役員の顔を立てる都合上であり、司には屈辱的な時間をお膳立て以外の何でもない。
ネットでも地上波でも、話題は誉め千切る内容ばかり。
電光掲示板でも祝福の記事が表示され、店内も客達にはチラホラ聞こえるも。
「結婚式もどきは、してやる。そこ迄はな」
「私は司様の妻になれるんですもの」
舌打ちしたまま、司は勢い良くドアを閉めた。
高飛車で当たり前に、言ってのけるプライドの塊な逃れ未来の妻かと思ったら反吐しか出ない。
「道明寺の名前が、今日ほど邪魔に思った事はないな」
この名前に潰されたつくしを、司は今も追い続けるだけであった。


そのつくしはカウンターに座って、心中でひっそりと祝福した。
幸せになって・・・あたしが幸せには出来なかったけど。
約束を破って行く、あたしに遠慮しないでね。


バ○タの乗り場は、休前日ともあって大変な混雑だ。
新幹線に間に合わない、乗車出来ない集団が利用する夜行バス。
ひっきりなしに、乗車案内のアナウンスが飛びかかう。
『○○番に入りますのは、23時20分発○❌交通○号京都大阪行となります』
仕事の出張や帰省もだが、大半はディ○ニー帰りが殆どだ。
ロゴの入ったビニールを両手に、カートを引き摺るカップルや仲間達と時間を楽しんだ名残。

つくしはディズニーに行った事が無い。
フロリダのディズニースタジオを、貸し切りで司や仲間達と行った事も良い思い出だ。

先程の店長からは、送別の言葉を頂いたつくし。
「ウチは結構、そう言ったお客様が多いんですよ。出会いもあれば、別れもあります。人間は経験を積んで成長しますから。」
「そうね、お兄さんも色々あったんでしょ」
「ダテに生きてませんから。新天地でも、最初は大変でしょうけど頑張って」
何も話をしてはいない、然し店は過ごした年月を語るように立ち尽くしている。
メニューの紙が色褪せていたり、油等の染み込んだ壁や雑誌に掲載されたであろう切り抜きやら。
それはこの店が過ごした日々を物語る。
「何か良いなあこの店。アタシが戻る時には未だ有るかしら?」
つくしは店内を見渡しながら、カウンター席奥の厨房と差し出した店員に頭を下げた。
「あるように、頑張りますから。又、お越し下さい」

英徳時代から、華やかなOL時代を過ごした東京に別れを告げる。
生まれたのは仙台だが、中学で東京に転校して英徳高等部に入学したのは早10年近く前の話である。
赤札を貼られた事から始まった学園生活は、自分の人生の中で何よりの宝物だったのだ。
「23時30分発の○○方面のバスを、御乗車のお客様は只今より受付を開始します」
あちこちでアナウンスが入り乱れる中を、つくしは目的地行きを聞き漏らさないように必死だ。
周囲ではディズニーシーや、キャリーカートを持つ老若男女の列。
つくしが乗車するのは、3列シートのバスで女性専用車となっていた。
乗車予定の女性の列に並びながら、つくしは乗車手続きを終える。
荷物を預けて、バスに乗り込んだ。
新幹線でも良かったが、今後は失業状態になるので高速バスで向かう事になったのだった。
つくしや大勢の女性客を乗せて、バスは予定時刻を出発していく。
「さようなら・・・英徳時代の牧野つくし」
つくしは都心のネオンを見つめながら、名残惜しそうに車窓を眺めているだけだった。


社内では学生らしき集団が、ディズニーシーの思い出を語り出していた。

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