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あの日を思い出すだけで、未だに武者震いが止まらない。
近くを男性社員が通るだけでも、ギクリとする。
部署が『営業部』であるから、営業マンからの見積書を幾つも掛け持ちしているつくし。
その日も係長の『山崎』から、プロジェクトの見積りを頼まれていた。
彼は体育会系の社員だが、『帰国子女』であり爽やかな雰囲気を醸す男性だ。
つくしは特別に好意を持つ訳もなく、普通に接していたにも関わらず。
『執務室』から見積書提出の催促を受け、急ぎキーボードを叩いていた。
小さいプロジェクトのマネージメントだが、何故か指揮を取ったのはよりによって『副社長』の道明寺司。

山崎だけではない、男性社員の殆どが司に苦手意識を持っている。
司や楓に睨まれたと思い込み、上司の久間部長みたいに入院や通院中になったのも何人かいる。
部長は違うのだが、係長はつくしを頼りにしている。

あの時は何万倍の倍率を潜り抜けたつくしの、プレゼンを楽しみにしていた。
山崎は自販機の前で、ネス◯フェのバリスタコーヒーを注文していた。
口笛を吹きながら、今日のlunchは何にしようか考えていた。
スラックスのポケットに、手を無造作に突っ込んでいた時。
直ぐ近くから、足元をふらつかせながらつくしがノロノロと歩いて来た。

パウダールームを兼ねた、化粧室のドアが音を立てて閉まる音が聞こえる。
『どうしたんだ?顔が赤い・・みたいだな』
赤くて汗ばんでいるみたいだが、室内の空調は快適に保たれている・・にも関わらずだ。

山崎はつくしに向かって、歩いて行く。
つくしは小さく呻いて、壁づたいに歩こうとしたが転倒してヒールの踵が折れたらしい。

つくし「うう・・・」
山崎「牧野君、大丈夫かい?」
つくし「あ・・・山・・あぁ」
赤い顔で目を反らすつくしの儚げそうな大きな瞳に、山崎は自分が異性で有る事を痛感した。
山崎「何があったんだ?顔が赤いみたいだが」

事務員の制服から、汗が染みてガタガタと歯を鳴らすつくし。
山崎は医務室へ、連れて行こうとした。
それは至極当たり前の行為であり、決してつくしに疚しい気持ちを抱いてはいない・・・筈だが。
風邪を引いたのだろうか?、しかし彼女の赤く染まる顔に女を感じてしまうのは何故だろう。
意思の強い大きく円らな瞳は、山崎の心を温かく穏やかにさせる気持ちが芽生える。
『牧野君に恋心を抱かない男が、居るならばそれは既婚か余程の悟りを開いた人間だよ』
つくしは呻いたまま、顔を床に近づけていた。
時折、痙攣する素振りに胸元を手で隠しながら。


ポロポロと涙を溢し、微かに唇を広げるつくしは妖艶さを増している。

山崎が手を無造作に、つくしへ伸ばそうとした時だ。

屈強な人々が山崎の前に、壁として憚っている。
つくしの爆弾を隠す為なのかは、誰も知らない。

かの一人を除いては。


本日もお越し頂きまして、有難うございます。
此方は短編のお話になります。
宜しくお願い致します。

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