FC2ブログ
「あら、牧野先生。もうすぐ、白鳥さん達がお見えになりますよね」
デロンギのコーヒーメーカーに、最高級の豆をセットし辺り一面は芳ばしい匂いに包まれている。
白鳥とは、妻の久美子経由で知り合いになったつくし。
久美子はつくしが赴任する前の、大学の先輩で心理学を勉強したりランチタイム等も一緒になったりと世話になった。
久美子は厚労省官僚の圭輔と、婚活イベントで知り合って結婚式を挙げた時にはつくしも参加したのが懐かしい思い出だ。

間名瀬准教授とも、授業公開で知り合ううちに食事に行ったりする事も増えて行ったのだ。
職場と寮の往復では、知り合うきっかけも生まれなかった。
が、つくしの場合はそうとも言い切れないとも言う。
類やあきらに頼まれて、パーティーの同伴もあった。
しかし今の病院になってからは、『愁訴外来』の仕事やら理学療法の勉強に学会参加も多々増えている。

教授選やら、理事選も絡むとつくしも駆り出されるのだ。
「間名瀬さんも、カリフォルニア州大からお話有るみたいですから」
マグカップを棚から取り出して、コーヒーを注ぐ。
つくしは紅茶を飲むが、最近はコーヒーも常飲出来る様になっていた。
しかしながら、隣の仮眠室に大きいベッドやらソファーが持ち込まれて来た事は安眠妨害になりかねない。

数日前に突然、仮眠室をリフォームする不可思議な事が起きた。
つくしは寮に戻っているし、何ら困る事はない。
他の医師達も、通いか寮に居るからだ。
つくしは珠に、夜勤を頼まれるが専ら子供の話し相手位だ。
『何か嫌な予感するんだよなあ』

つくしの鈍さは健在である。


白鳥が新天地への赴任を考えている隣では、司が目を閉じたまま高校時代に脳内で戻っていた。
『牧野様はアリアドネの存在みたいだ』と、西田に言われた事が有る。
あの頃の司は手に負えない乱暴者で、母の楓が金で解決を計り更に悪化するばかりだったからだ。

つくしの出現は、あれだけ素行に手が付けられなかった司の首に鈴を付けた様なものだ。
司はつくしに依って、人間としての感情を取り戻し素行を更正させたのだ。
『アリアドネ』は、最愛の人間が迷う神を救ったとも言われている(諸説あり)。

英徳学園に神が降臨したかの如く、民衆(生徒達)は羨望の眼差しを向け彼らを賛美する意味合いでコールが起きた。
その光景に目を背け、神と謳われた彼らに刃なる素手と言動。
牧野つくしが彼らに、現実社会での覚醒を促した。
アリアドネの糸であり、究極の珠になり得し存在。
司にとってのアリアドネ、彼女は身体を張って対峙した話。
しかしながら、つくしには自然消滅と信じて完全にその話は過去の出来事。
仕事に没頭する日々の彼女には、全く只の知り合いレベルな認識でしかなかった。

間名瀬准教授とは、同じ専門分野で尊敬出来る数少ない異性だった。



ランキングに参加しています。
良かったら、ポチっとしてくれましたら幸いです。











人気ブログランキング
スポンサーサイト
Secret