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雪を入口近くで叩いて落とす司の姿は、一枚の絵画に匹敵する美しさであった。
妻の郁美は頬を染めながらも、トレイにマグカップを乗せて二人が座るソファーに運んで来た。
慇懃にソファーへ付く事を勧められて、SPと共に司は席に着いた。
白い液体が満タンに、マグカップから湯気を漂わせる。
郁「お口に合いますか分かりませんが」
SPに毒味をさせてから、司も一口啜る事にした。
司「クラムチャウダーは、身体が温まるな。感謝する」
吉松「美食ではありませんが、平にご容赦ください」
司「昔ならそれで片付けてはいたが。牧野と出会ってからは、変わったようなものだ」
マグカップには、並々注がれた『クラムチャウダー』から湯気が溢れている。
吹雪が小康状態とは言え、途中の道のりは底冷えの寒さが厳しかったからだ。
郁美は洗い物を再会し、吉松は煙草に火を付ける。
司「牧野はずっと此処に来て居るのか?」
吉松「オレは結婚してから、この店を構えたんで。そうですね、牧野さんはその前から来てるんですよ。生まれはこの近くです」
吉松はアルバイトをしながら、アート製作に精を出していた。
二科展に入賞すると、アメリカやイギリスで認められパリに留学もしたのたが。
パリで個展を開いた時に、つくしと連れ立って来たのが郁美だった。
郁美は吉松の作品をきっかけに、付き合って結婚したのだ。
郁美「娘達が道明寺さんの、記事を読んでました」
司は苦笑いをするばかりである。
司「光栄と言っておくべきか」
吉松はポツリポツリと、つくしの近況を話し始める。
吉松「牧野さんが来てるのは、漁師町近くの古臭いスナックみたいな感じですね。貴子さんの店は、この辺りでは有名ですから」
司「貴子さん?とは、誰の事だ?」
吉松「牧野さんの叔母さんです。亡きお父さんの妹さんと、聞いてます」
貴子は結婚を機に、漁師町へ移り住んだという。
貴子の嫁ぎ先は、戦後直ぐに漁師町で漁業の傍らでスナックを経営していた。
バブル時代には、複数の店舗を経営しながらも、事業家としての一面も持っていたのだと言う。
吉松「貴子さんは不動産や株で成功した一面もあってか、春男さんの事件を知った時にはショックを受けてましたが。牧野さんを守る為に、並大抵以上のプレッシャーを抱えながら頑張ってたんです」
司「牧野はその叔母を、頼っている訳なんだな」
吉松「そうなりますね。牧野さんは事件で騒がれた時も、貴子さんが支えていたんです」
司「其処は何処に有るか、場所を教えて欲しい」
吉松「良いですよ、オレも様子伺いするとこでした」
吉松の話では、今日も営業する予定らしい。
吉松「海の男達や、地元民の憩いですからね。オレも世話になってます」

吉松は自家用車にチェーンを巻くと、司達と連れ立って行く事になった。
運転は念のためSPがハンドルを握っている。
吉松「貴子さんに連絡入れるかな」
吉松はスマホの通話画面を、起動させるも。
聞こえて来るのは女性ボイスによる断りメッセージ。
吉松は訝しそうに、唸るだけだった。
「っかしいな。留守かな?」
「どうした?」
司は努めて静かに吉松を、問い質した。

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